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優秀な社員ほど、仕事量が増えていく図式

「仕事は、忙しい人に頼め」と言われる。私の経験から言っても、優秀な人ほど忙しい傾向にある。社長としては、優秀がゆえに、その社員に安易に仕事を依頼してしまう。とくにありがちなのは、新規事業の依頼だろう。新規事業は、まだ誰も手を付けたことがない分野だから、何をするにも手間がかかる。だから、わからない問題に対して臨機応変に対応できる人材を選ぶしかない。

もちろん、優秀な人材に難易度の高い仕事を依頼すること自体は、何ら問題ない。頼まれた社員にしても、「これを達成できればスキルが上がる」という気持ちにもなる。問題は、正当な評価をしないまま、仕事量だけを増やしてしまうことにある。こうした状態が続くと、優秀な社員ほど退職の道を選ぶ。評価と業務量について、もう少し細かく検討してみよう。

社長の評価は、辛すぎる

人は、「自分を正当に評価して欲しい」という意識を持っている。それは職場における地位かもしれないし、給与かもしれない。いずれにしても「評価されている」という実感を社員が持てるようにしなければならない。これは口で言うほどカンタンではない。

社員が持っている自己評価と社長が抱く評価は、異なることが一般的だ。どうしても前者が高くなってしまう。これは社長が「自分をベース」にして社員の能力を評価するからだ。社長が「自分ならもっとうまくやれる」と考えているかぎり、社員に対する適切な評価は実現できない。新たな仕事を与えるときは、同時に社員をいかに評価するかも検討するべきだ。評価なく仕事ばかり増えれば、誰だって腐ってしまう。

「効率を上げろ!」にも、無理がある

長時間労働を抑制するために、「生産効率を上げよう」と言われるが、正直のところ眉唾だ。「効率を上げる」というのは、「同じ作業を短時間で処理する」という意味だ。以前と同じ作業量を、短時間で処理するなど、そもそも無理な要求だ。作業の効率を上げることだけで、長時間労働を抑制できるとは考えにくい。

社長が具体的な指示や費用を出すことなく、「もっと効率化して」と言うのであれば、現場としてはしらけるだけだ。「給与は上がらないのに、効率を上げろと言われても……。社長の懐が温まるだけでしょ」ということになる。

「効率を上げろ」と命じることは何の解決にもならないが、優秀な社員への業務集中をすぐに解消できる方法がある。