リーマンショック後に191社まで増えた「希望・早期退職者募集の実施企業数」(*)だが、減少が続き、2016年度には18社にまで減っていた。ところが、2017年度には25社に増加。今後の動向に注目が集まっている。一方、中小企業ではPRや販路開拓、新規事業といった分野で専門性を持った幹部社員が不足している。会社を去る大企業ビジネスパーソンと成長段階にある中小企業が出会えば、面白いことになる――。

*東京商工リサーチ「2017年度主な上場企業『希望・早期退職者募集状況』調査」(2017年に希望・早期退職者募集の実施を公表した企業数とその募集人数)より

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早期退職で、行き場を失う50代

業績が好調なビジネス機器を扱う大手企業で、40歳以上の社員を対象に早期退職者の募集が行われた。50代社員は実質的に選択肢のない早期退職勧告だ。早期退職優遇制度で退職金の上乗せはあるが、早期退職を余儀なくされた50代社員たちの再就職先は大部分が決まっていない。

前述した企業とは別だが、歴史のある会社のオーナーが自社株をファンドに売却し、株を入手した法人は、将来的には他社への事業譲渡や資産売却による清算を視野に入れているという。こうした顛末があり、40代の社員たちは早期退職を受け入れて転職した。

「大企業だから」「経営が安定しているから」「報酬や待遇がよいから」といった理由で就職先を探して仕事に就いた人がいる。結果を出した人であっても、中高年になって人員削減の対象になることはめずらしいことではない。「最もリスキーな職業」は「ベンチャー企業の経営者」や「中小企業の社長」ではなく、「企業に勤めるビジネスパーソン」なのかもしれない。

中小企業勤めは、リスキーなのか

中小企業で働くのはリスキーだという向きもあるが、規模の小さな企業でも取引先企業が1社ということはなく、複数の取引先を持っている。たとえ1社からの仕事が途絶えても、他社の仕事がある。だが企業に勤めている給与所得者の場合、会社が倒産したり、解雇されたりしたら、収入は瞬時に途絶えてしまう。早期退職せずに定年まで働けたとしても、長い老後を何もせず、年金だけでは暮らせない。何かしらの仕事に従事しないと、人生の後半戦はとても厳しいことになる。

一方で、自営業を営む人たちや中小企業の経営者、フリーランス(個人事業主)として仕事に携わってきた人たちに「定年」はなく、「他人から早期退職を迫られること」はない。その代わり自分の能力の限界は、自分で判断し、自分で見切りをつける。

彼らは自らの手で顧客を見つけ、仕事を生み出すことで収入につなげている。また継続的に購入してくれる顧客や、恒常的に仕事を発注してくれる取引先を開拓し、収入が安定するように取り組む。これらの人たちは、「給与はもらうもの」という発想がなく、「仕事は自らの手で生み出すもの」であり「収入は自分で稼ぎ出すもの」という考え方で生きている。

売り上げが減れば、仕事を増やすために顧客や取引先を増やす方法を考えるし、売り上げの変動が激しければ、安定した売り上げを上げる方法を見つけるために知恵を使う。社員を雇用していて業績が悪くなれば、経営者として自身の給与を減らすのは当然だと考えて実行する。

自力で生き抜いてきた人たちは、会社の看板に依存することなく「仕事をつくり」、実績を上げている。業績の浮沈は身を持って経験しているので、対処法も自力で考え出し、逆境にあっても強い。フリーランスの場合、若くても仕事がなくなる恐怖を知っているから、傍観せず、自力で何とか難局を乗り越えようと取り組む。