ファシリテーションで、必要な3つのスキル

会議のファシリテーションという立場でも、間をうまく使うと、その場を仕切ることができます。そのときに重要なポイントは3つ。

1つ目は相手に、自分の意見を話したという感覚を与えるまで話をさせること。相手がしゃべったと腹に落ちるのは、息の終わりです。途中で話をさえぎらず相手が息を吐ききって、話し終わるまで待ちましょう。

2つ目は、意見を言いたそうな人を見逃さないこと。そういう人の特徴は少し、口が開いています。口が開いていなくても息を吸いながら口を挟むタイミングをねらっています。他の人の話をしっかりと聞きながらも、意見を言いそうな人の息を読んでいきましょう。

そして3つ目は、最後に合意形成の場面をしっかりとつくることです。具体的には「それでは、みなさんのご意見をまとめたいと思います」などと言ってから間をとりましょう。

自由に回答できるオープンクエスチョンにしない

間のつくり方は、それまでの話をまとめたメモを見る、ホワイトボードを眺めるなどして、先ほどの、行動を挟む方法を使います。この間によってメンバーの頭の中で、今日の話がリフレインされて聞く態勢がととのいます。「Aさんからはこう、Bさんからはこういう意見が出ました」と意見を振り返ります。

そして最後に「みなさん、○○ということでよいですか」と回答を限定するクローズドクエスチョンにします。「みなさん、いかがですか」と自由に回答できるオープンクエスチョンにしないというのがコツです。

クローズドクエスチョンにしたうえで、「みなさん」と「○○ということでよいですか」のあいだに間をとります。間があることで、言われた相手は思わず「はい」と返事をしてしまいます。反対されそうな相手がいるときは「Aさん。(間)○○ということでよろしいでしょうか」と個人名のあとに間をとると、イエスという答えを引き出しやすくなります。

この3つのポイントをおさえながら間をとり、ファシリテーションを行っていくと「場をまとめるのがうまい」と評価が上がるでしょう。ぜひ間合い上手を目指し、コミュニケーションを望む方向にもっていきましょう。

矢野 香
スピーチコンサルタント
長崎大学准教授。NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し、博士号取得。政治家からビジネスパーソンまで幅広い層に信頼を勝ち取る正統派のスピーチやコミュニケーションを伝授。近著に『たった一言で人を動かす 最高の話し方』(KADOKAWA)。

構成=池田純子 イラスト=アヤコオチ 写真=iStock.com