「家族が会社を経営していて、母が育児を理由に仕事を休まざるをえず、苦労していた姿を見ていました。できる人が手を貸さないと社会は回らないと日頃から思っているので、同僚の育児をサポートするのも自然なことだと思っています」

CS部門の社員4人のうち竹田さんを含む2人は子育て中で時短勤務。時短勤務社員は勤務時間が短いため給料体系も変わるが、「業務内容そのものは同じで不公平感は感じない」(竹田さん・宮坂さん)。とはいえ、突発的な子どもの発熱などで欠勤が重なる時など、マネジャーの立場としては頭を抱えることもある。可能な限り早めに連絡をもらって業務フォローする、他部署にも手伝ってもらうなどで乗り切っている。

基本的には保育園に預けることを推奨

ワーママ社員のマネジメントは大変、というイメージが世間にはあるが、宮坂さんからすると「お互いに慣れるための期間が大事。どのくらいまでなら無理なくできるのか、少しずつ調整しながら試す助走期間を数週間は設けてベストバランスを見つけるようにしています」。

子連れ出勤というと女性社員のための優遇策ととらえがちだが、同社では男性社員も積極的に活用している。人材派遣業界から3年前に転職し、CFOを務める楠大介さんも、長女の三惟子(みいこ)ちゃん(1歳6カ月)を膝に乗せてパソコンに向かう。子連れ出勤を始めた理由は「保育園に入れなかったから」。大学の非常勤講師をする妻は授業時間しか勤務と見なされず、入園の申し込み基準を満たさなかった。しかしながら、夫婦共にキャリアは中断したくない。楠さんが半年間の育休を取得後、双方の両親のサポートを得ながら、週1日は子連れ出勤することで共働き生活が成り立っているという。

「もし子連れ出勤ができなければ、妻の働き方を変えざるをえなかった。『困った時にはいつでも職場に連れてきてもいい』という選択肢があることで、気持ちとしてかなり楽になれる。子どもも家とは違う環境を新鮮に感じてくれるので、自宅で子どもを見ながら仕事をするよりも職場の方が数段はかどる」(楠さん)

同社が子連れを無条件で歓迎しているかといえばそうではなく、基本的には保育園に預けることを推奨しており、子連れ出勤はあくまで待機児童になった場合などの“つなぎ”という位置づけ。しかし、このつなぎがあることで「辞めなくていい」という安心につながっている。

また、楠さんは「同僚の子どもたちの成長を観察しながら、1年先、2年先の育児の見通しも立てやすい」という効果も実感。「寝かしつけに苦労するようなリアルな姿も含めて後輩が見て、『これだったら自分にもできそう』と思ってくれたらうれしい」