「誰を連帯保証人にするか」が一番大切
社長としては、何としてでも被害額について回復をしたいはずだ。さりとて本人は、すでに利得したものを消費しており、手元に持っていないことが通常だ。親族などから借りて一括返済してもらえればいいのだが、協力者がいるとは限らない。人は、ない袖をふることはできない。
この場合には、分割で支払ってもらうことになる。一般的に不正に手を染めた社員には、会社を辞めてもらうことになる。社長としては、本当に支払ってくれるのかと不安になるだろう。このような場合には、連帯保証人を用意してもらったうえで公正証書を作成することになる。
公正証書は、判決と同じような効力があって裁判をすることなく強制執行をすることができる。ここでのポイントは、誰を連帯保証人にするかということだ。多くの社長は、連帯保証人の設定に失敗する。「とりあえず誰か連帯保証人にしておけば大丈夫だろう」と安易に考えがちだ。だが、連帯保証人にも資力がなければ回収できないリスクが残る。連帯保証人をつけるときには、その資格があるのか見極めるべきだ。
兄弟や子供の給料を押さえる
典型的な失敗事例は、配偶者あるいは親を連帯保証人にするケースだ。そもそも不正の多くは、世帯としての収入が不足しているから行なわれる。そのため配偶者も資力がないということは珍しくない。また親については、年金しか収入がないため資産がないことがある。年金は差押えが禁止されているため、親からの回収も期待できないのが実情だ。
その意味では連帯保証人としては、本人の子や兄弟がいい。給与は差押えができるので、どこかに社員として勤務している人がいい。自営業者の場合には、給与というものがないため、差押えをする財産を調査することに手間取ることがある。
最後になったが、不正をした社員への処遇だ。社長としては、懲戒解雇とすることが多いだろう。だが解雇とすると「不当解雇だ」と争われるリスクもある。何より本人の再就職が難しくなり、分割による支払いができなくなる可能性もある。
私は、解雇ではなくできるだけ退職を認めることをおすすめしている。恩を売っておくことで支払いを確実にしてもらう、という意図もある。自分なりの苦い経験から学んだことがある。それは「正義を正義としてふりかざしてはいけない」ということだ。声高に自分の正義を述べることは、誰かを追い込むことになる。それはかえって自分の首を絞めることにもなる。
「許せない」というときこそ、歯を食いしばっても一条の許しを与えること。それが真の社長ではないだろうか。