四大法律事務所の1つから、名もないベンチャー企業へ
四大法律事務所の1つに数えられる「西村あさひ法律事務所」で弁護士をしていた岡本杏莉さんが飛び出した先は、スタートアップ企業の「メルカリ」だった。
「入社したのは15年春。当時、メルカリは設立してまだ3年目でした。スタートアップ業界では知られていましたが、一般的な知名度は現在に比べると低かったと思います」
当時は「何それ?」「なんの会社?」と聞かれることも多かった。
「そういう意味でリスクはありました。ただ、その時はそれをリスクだとは感じていなかった。むしろ、チャンスを逃すことのほうがリスクだと思ったんです」
そう思ったのは、前職の法律事務所の派遣制度を利用して、米スタンフォード大学のロースクールに留学した経験が大きい。
「スタートアップが多い土地柄、キャンパス内で起業家と知り合うこともありました。キャンパス内外で話を聞くとすごく刺激的だし、社会的使命を感じてビジネスを起こしたのもわかりました」
留学前はM&Aなどの企業法務を担当していたが、自分自身に物足りなさも感じていたという。
「クライアントとの距離がなんとなく遠いな、と感じたんです。クライアントは買収以前に多くの検討を重ねていますし、じつは買収した後のほうが大変で重要なのに、弁護士はそうした過程のごく一部にしか関与できない。自分に見えている領域はあまりに狭い、と思いました」