自分が結果を残すことで女性のポストが増える
「理学部の出身でしたし、入社した頃は保険はもちろん、経済や法律のことも正直、何も知りませんでしたから。でも、いま思えば知識やスキルがないからこそ、かえって与えられた職場で精いっぱいやっていこうという気持ちになれた気がします。目の前に新しい仕事がやってくるたびに、必要なことを一つ一つ身に付け、できる限りのことをするしかない、と」
そんな彼女が初めて「自分のキャリア」のあり方を意識し始めたのは、いまから3年ほど前。東京本社の総務グループの担当課長に異動したときのことだった。
「異動前に私が担当していた千葉支社の支社担当部長は、これまで女性が就いたことのないポストでした。うれしかったのは、その後任が女性になったと聞いたときです。『今年からあのポジションの女性が増えたんだよ』と上司に言われ、自分たちの世代がきちんと与えられた場で結果を残すことが、会社を少しずつ変えていくことにつながるのだと実感したんです」
以後、その役割を自分がいかに果たしていくかを意識するようになった、と彼女は続ける。
宇都宮支社次長になってから、「身近な目標」と考えているのが、次の異動でも別の支社で次長を務めることだという。そのことが女性管理職を社内で増やし、より多くの活躍の場をつくっていく一つのきっかけになると思うからだ。
「当社には女性が次長職に採用されたことのない支社が、まだまだ多くあります。だからこそ、宇都宮支社での経験を活かして、他の支社も変えていきたいですね。自分が関わった職場を、そこで働く人たちと一緒によくしていく。そうした目に見える成果に、私はやりがいを感じるんです」
撮影=冨田寿一郎