部下の話をよく聞いて一緒に解決していく

「まず相手の話をきちんと聞くこと、それから、その人の立場でものを考え、何をしてほしいと思っているのかを想像すること。たとえば、営業部長が忙しくて書類を提出していないと、事務職の社員は困りますが、『早くしてください』とは言いづらいわけです。そんなとき、『じゃあ、私から電話しておくね』とフォローしたり、次からは遅れないように部長にさりげなくクギを刺したり。ささいなことですが、そんなことを積み重ねるうちに、だんだんと周囲に受け入れられていったと感じています」

(上)業務職と呼ばれるメンバー(約70人)の人材育成も藤井さんの仕事だ。(下)営業部長は男性ばかりだが、「男女関係なく、同じ目線で話のできる次長さんでよかった」と言ってもらえた。

上司である太田裕治支社長は、彼女についてこう語る。

「近年は部下の働き方の価値観が多様化し、以前の男性職場にあったような画一的な強いリーダーシップだけでは部下を育てられなくなりました。ですから管理職は自分たちが経験していないやり方で、部下を育成していかなければならない。彼女は特に、部下の話をよく聞いて、一緒に物事を解決していこうとする姿勢がいい。上司が誘導するのではなく、部下自身が『自分で考えて判断した』と思えるようにする粘り強さを、時代に合った育成手法として評価しています」

広島生まれの藤井さんは、1997年、九州大学を卒業後に日本生命へ入社した。大学では理学部に通い、カブトガニの血液から生活に役立つ物質を抽出・分析する研究室に在籍した。

就職活動では、製薬会社などの研究職を目指したが、当時は就職氷河期。女性が長く働ける職が少なく、文系の職種に志望を広げる中で出会ったのが日本生命だった。当時としては異色の経歴だ。

1年目に配属されたのは、博多支社(現・福岡総合支社)。その後は大阪、静岡、千葉、東京と転勤を繰り返してきた。

営業、総務、販売と、幅広い業務を経験してきた一方で、「自分のキャリアプランについては、ほとんど考えるヒマがなかった」と話す。