メールや電話もよいけれど、手書きの手紙が届いて「おっ?」と印象に残った経験はありませんか。今回、日常的に手紙を書いているという著名人に、手書きの魅力を語ってもらいました!

「私からのラブレターです」と渡すこともあります

ifs未来研究所 所長、伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役 川島蓉子さん

手紙を書くようになったのは、社会人になってから。当時は男女雇用機会均等法施行前。まだまだ女性は相手にされない時代でした。だからこそ目上の方に可愛がってもらう機会に恵まれ、食事をご一緒したり、ためになる話をお聞きすることも多く、どうにかお礼の気持ちを伝えたくて、手紙を書き始めたのがきっかけです。

メールよりも電話、電話よりも手紙。手紙というツールの持つ強さを感じ、伝えたい思いが大きいほど手紙を選びます。

ここ3年ほど親会社である伊藤忠商事の企業広告の仕事に携わっていました。その一連の広告は、社長の岡藤(正広氏)の「コーポレートスローガンをつくりたい」という社長直轄のプロジェクトでした。ただの広告ではなく、株主総会当日に打ち出すという大変重要なもの。私としても、32年の仕事人生で最大の仕事だったと思います。

その大切な第1弾。そこで掲載するのは、現在の岡藤の姿ではなく、彼の原点となるような、あえて幼稚園時代に撮られた「世間にひと言もの申す」といった表情の写真をモチーフにしたイラストがよいと判断し、それで企画を通そうと考えました。

とはいえ、岡藤は10万人以上の社員を持つグループ企業の経営トップ。どんなコミュニケーションツールを使うべきか悩みましたが、企画の意図をどうしても私の言葉で伝えたくて、手紙にしたため、渡したのです。

すると岡藤は「おっ、ラブレターやな」とひと言。「そうです、私からのラブレターです。読んでください」。こんなやり取りができたのは手紙ならではでしたね。

ラブレターが功を奏したのか、社長決裁は一発で通り、のちに「ひとりの商人、無数の使命」と題されたシリーズ広告は、おかげさまで日経広告賞の「大賞」をいただくことができました。