人生の3分の2は平成を生きたはずなのに、子どもの頃に叩き込まれた昭和の価値観が抜けない40代。今の40代は生きづらい?河崎環、おおたとしまさ、田中俊之、常見陽平という男女4人の論者が真剣に「40代男女の生きづらさ」について話し合います。

12月15日、東京・下北沢の書店「B&B」で、女性コラムニスト河崎環氏の処女作『女子の生き様は顔に出る』の刊行を記念したトークイベント「真剣40代男女しゃべり場 生き方、働き方忘年会議」が開催された。登壇者は河崎氏のほか、男性学の視点から男性の生き方の見直しを進める武蔵大学社会学部助教の田中俊之氏、育児・教育に関する書籍を数多く出版している育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏。司会は千葉商科大学専任講師で働き方評論家の常見陽平氏が務める。イベントでは、男性・女性にかかわらず、今の40代が抱える生きづらさにフォーカスした、息の合った議論が繰り広げられた。

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(左)コラムニスト 河崎環氏(右)河崎環(著)『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)

男性へのメッセージは、当の男性に届かない

【常見】今日、40代の方はどれだけいらっしゃいますか?(会場の手が挙がる)あ、8割ぐらいが40代の方ですね。

【河崎】素晴らしい。

【常見】河崎さん、初の著書『女子の生き様は顔に出る』の反響はいかがですか?

【河崎】私自身、ライターとしては16年ほどキャリアがありますが、長い間読んでくださっている方たちは「(著書を)待っていたよ」と温かい言葉をかけてくれました。この本はプレジデントウーマンオンラインで「女について」というテーマで書いていたコラムをまとめたものなのですが、週刊のコラム連載というのは、毎週自分が追い込まれていきますね。着ているものを一枚一枚脱いで、公然ストリップをしているような気分です。それがようやく本になって、みなさんにお届けすることができて何よりです。

【おおた】僕は河崎さんのコラムを読んでいて、「この重厚感のある文体は何だ」と思っていました。そこに生命が宿っていて、世界観がまとまっている。この人は天才だ、と。

【田中】僕が研究しているのは男性学なのですが、僕が伝えたいメッセージを届けたい人が聞いてくれないという問題があります。企業で講演をしても、「定年した後でやることがなくなる人」や「長時間労働で埋没してしまっている人」の話をしているのに、該当している年長者や管理職層は聞きに来ません。でも、この本を読んでも、この会場を見ても、女性へのメッセージは「ここから学んで私を変えていきたい」という女性たちにちゃんと届いている感じがします。男性との違いは何だろうと考えてしまいますね。

【河崎】ここに来ているみなさんは、男性でも女性でもチャンネルが開いている人だと思います。田中先生が男性学を伝えたいのは特定の層ですが、私の読者はもう少し間口が広いです。

【田中】『女子の生き様は顔に出る』の中にリケジョとダイバーシティの話が出てきますが(参考記事:君臨する女――あの人は“リケジョ”なのか、それとも“オタサーの姫”だったのか)、“オタサーの姫” ※として持ち上げられるような組織に女性が入っていっても幸せにはなれないと説いています。でも、女性を持ち上げている当事者のおじさんたちは問題に気づかないんですよね。「ダイバーシティと言われているから女も入れてやろうか」という意識でしかない。

【河崎】完全に閉じている人たちですね。

【常見】そこで成立してしまう世界があるんでしょう。

※オタサーの姫…「オタクサークルの姫」の略。オタクが多いサークルにいる数少ない女性メンバーがちやほやされることを指す。