仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、連載第19回は「頼り下手」に関するご相談です。

【今回のご相談】
人に頼ることが苦手です。何か課題を与えられたり、壁にぶつかったりするとすぐに「自分で解決しなくては」と考えてしまい、人に頼るということに思い至りません。人の力を上手に借りて、高いレベルで仕事の目標を達成している同僚を見ると、「ずるい」という気持ちとともに、自分もそうなりたいと感じます。どうしたらうまく人に頼れるようになれますか。
頼り上手な人を見る度にいまいましい気持ちになっていては、頑張りやさんの美点が台無しです。「頼り上手な頑張りやさん」になれたら、鬼に金棒です。(イラスト=伊野孝行)

デキる人だからこその弱点の克服を!

【河崎環さんの回答】

私も、人に頼るのを大の苦手とするタイプでした。長女だし背も高いし優等生だしで、しっかり者でなきゃいけないと思い込んでいました。だからなんでもすぐに「できなーい」「知らなーい」「手伝ってー」と言える甘え上手な人を見ると、「“できない”じゃない、やるんだ!」「知らなかったら自分で調べろ!」「手伝ってもらうことに慣れ切った人間は、いつまでも自力で歩けないのだ馬鹿者!」と心の中でキリキリ叫んでおりました。

しかしですね、そういう人間はいとも簡単に挫折します。ポキっとね。というのも、自力で何もかもやろうと肩肘張ったところで、所詮自分の中のリソースなんてものは限界があるからです。常に頑張って学べば成長できる、課題解決できると思い込んでいるあたりも、自分を買いかぶりすぎです。踊り場知らずの、常に角度高く右肩上がりな成長曲線など存在しないし、まるでジェットコースターの序盤とその後の急降下を想起させ、危なっかしいだけです。そういう、自分でどんな課題でも解決するのだ、と頑張ってしまう人のことをオーバーアチーバーと呼び、特に欧米の優秀な女性の間では反省を込めて語られてきました。

社内LANでも、インターネットでもいいですから思い浮かべてください。ネットワークに接続されていないスタンドアローンのコンピュータは、自分の処理能力だけを頼りに情報をひたすら蓄積するばかりで、まさに孤独。周囲のネットワークの成長やスペックの進化にも取り残され、やがてポイッと新しいマシンに取って代わられるのです。あなたはせっかくデキる人なのですから、そんな孤独な旧機種にならないで。まずは自分の買いかぶりを捨て、「本当はできない部分」を受け入れて、他者にその部分をエイっと委譲しましょう。複数やチームで達成した内容がはるかに自分の能力の範疇を凌駕していることに気付いたら、チームプレーの魔法的なメリットにハマること間違いなしです。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。