ケース1:胸に抱く目標は、「35歳で年収1000万円」
●河野祐子さん(仮名)場合
職種:医薬品の開発支援に関わるクリニカル・リサーチ・アソシエイト
転職のきっかけ:同業種の知人が、年収アップできる会社を紹介してくれたため。
成功の秘策:目標!
学生時代は薬学部で学び、薬剤師としてドラッグストアに就職。迷いなく選んだ道だが、実際に働いてみると、思い描いていたイメージとのギャップを感じたという河野祐子さん(仮名)。
「ずっとこの仕事を続けていけるのかと思いました。楽しい仕事ではあるけれど、先々の自分の人生を考えたとき、ビジネスウーマンとしてキャリアを積むのとは方向性が違うかなと……」
薬学部の同級生や身近な先輩に話を聞くと、企業で働く人もいれば、さまざまな職種で活躍する人たちもいる。自分がキャリアを形成するにはどういう道があるのかをリサーチしたうえで、転職サイトに登録したのだった。
「まずは収入を上げていきたいという希望がありました。薬剤師の初任給は420万円ほどで待遇も悪くなかったけれど、収入を上げていくことは難しい。だから、目先の給料というよりは、5年後、10年後にどういう収入の上がり方をするのかを見据え、女性でも長く働ける仕事に就きたいと思っていたのです」
当時はまだ世間を知らなくて……と苦笑しながらも、「35歳で年収1000万円」を目標に決めたという河野さん。1年後にはドラッグストアの薬剤師を辞めて、転職した。
次に選んだのは医薬品の開発支援をする仕事だった。製薬メーカーが医薬品を開発するにあたり、臨床現場である医療機関にアクセスしてドクターと協議したり、薬品のプレゼンテーションをする人材を派遣する業界がある。
河野さんは自分が学んだ知識も活かせることからその業界へ入り、最初はベンチャー企業へ就職。「クリニカル・リサーチ・アソシエイト」として、メーカーへ出向することになった。
「自分が関わった医薬品が世に出ていく喜びがあり、達成感もありました。医療機関とのやり取りを通して、ビジネスのコミュニケーションスキルを学ぶことができ、プレゼンテーションの場で度胸も身についたので、チャレンジして良かったですね」
3年半勤めた後、同業の知人の紹介でさらに規模の大きい会社へ転職。そこでは福利厚生がより充実し、年収も200万円アップした。
一方、同じ業界でも薬剤の種類は多岐にわたるので、新しい知識を求められる。新薬の開発にしのぎを削る業界だけに精神的なプレッシャーもかかる。プロジェクトでの責任も増し、その先にはマネジメントスキルを身につけるための課題も見えてきた。
「それが年収アップとキャリア形成につながっていく。私にとっては自分のライフスタイルとともに、収入が大きいファクターになっています。自分の生活はもとより親の老後など先々への備えを考えたら、やっぱり自分に力をつけて稼ぐ必要があるので」と微笑む河野さん。現在は31歳だが、35歳で年収1000万円という目標は変わらない。明るい笑顔の内には家族を支える思いも秘められていた。
冨田寿一郎=撮影 エン・ジャパン=取材協力