自分の型にはめず親は背中で見せてほしい

今から2年前、インドネシアの仏教の聖地・ボロブドゥールでご来光を眺めました。素晴らしい景色に感動し、その後飛行機に乗ったら、夢に両親が揃って出てきたのです。2人が僕の顔を見て、「もっと真面目に生きなさい」とか何とか言う。この期に及んで怒られる夢を見るなんて、やはり相当怖がっていたのかもしれません。その話を妻にしたら、「バカね、いつまでも親離れができなくて」と怒られました(笑)。

「子どもは親の背中を見て育つ」のメッセージは、伸之氏自身が後年に感じとった、両親の愛情と教育方針によるもの。

それ以来、両親の歴史や暮らしぶりが気になり、自分でも調べたりしていたんです。彼らの歴史を紐解くうちに、あらためて偉大さを感じましたし、「自分がどれほど愛されていたか」を痛感しました。

子育てで悩むお母さんは、何でも子どもの立場で判断したほうがいい。自分の型にはめず、背中で見せてほしいと思います。親には親の価値観があるけど、それを子どもに押しつけすぎるのはよくない。子どもは親の価値観を観察して、いいところだけを吸収し、そこに自分が発見したいいものをプラスしていくのが理想。子どもは親を超えなくてはならないわけだから。僕自身がそうですが、子どもが年を重ねて振り返ったとき“尊敬できる親”からの影響をあらためて実感するはずです。

 
出井伸之
1937年11月22日、東京都生まれ。成城小学校から成城中学校、早稲田高校を経て、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。60年、ソニー株式会社に入社。社長、会長兼最高経営責任者(CEO)を歴任。退任後、産業活性化や新産業、新ビジネス創出を目的とする「クオンタムリープ株式会社」設立。

蓮池由美子=構成 国府田利光=撮影