世界最大のコングロマリットの技術者として働くオオヌキさん。その原点にあるのは学生時代、ロケットを一から手作りした体験だった。
原点の一つとなった学生時代の経験
2010年、アメリカ・南カリフォルニア大学の3年生だったある日のことだ。理系学生が集まるロケットクラブの一員だったビール・オオヌキ・ミホさんは、全米のロケット愛好家が集まるイベント会場にいた。
場所はネバダ州にあるブラックロック砂漠。夜には月明かりしかない会場で寝泊まりし、自分たちが一から設計したロケットを打ち上げるためだった。
筒状の巨大なアルミにカーボンファイバーを巻き付け、燃料も手でこねた。だが、企画から数えれば数年、長い時間をかけて組み上げた3mほどの思い入れ深いロケットも、打ち上げてしまえば一瞬である。
「10、9、8、7……」
カウントダウン終了とともに燃料に点火すると、ロケットはものすごい音と煙を出し、はるか7000mの上空まで飛んでいったのだった。
「あのロケットクラブでの日々は、私の原点の一つです」と彼女は言う。
「メンバーはみな優秀で、とにかくロケットが何よりも好き。結果的にはスペースXやブルーオリジンといった新しい航空宇宙企業に就職していきました。クラブでは機械やデザインの仕組みだけではなく、リーダーシップのあり方も学べたし、モノづくりのすべての過程を体験できたと思っています。学生時代のハイライトですね」
1988年に東京で生まれたオオヌキさんは、高校生のときにアメリカへ単身留学。飛行機が好きだった彼女はそのまま同国に残り、大学では航空工学を専攻した。そして就職先に選んだのが、このゼネラル・エレクトリック(GE)。米国本社への入社後にはノースキャロライナ州立大学で機械工学の修士号を取り、社内で幹部候補を育成するリーダーシップ研修にも選出された。将来に期待をかけられている女性エンジニアの一人なのだ。