全くの未経験から技術職に抜てきされる

横田さんがALSOKの技術スタッフになったのは、2004年のことだった。

地元の商業高校を卒業後、1999年に同社へ入社した。最初の1年半は事務職を経験、その後3年半は顧客企業に出向き、常駐警備の受付スタッフとして働いた。その新人時代にはセキュリティシステムの電源を切り忘れてフロアに入ってしまい、警備員が駆けつけてきたことがある。あれは大失敗でした――と、彼女は少し照れくさそうに話す。

「ミスをして先輩に怒られることも本当に多かったですね。ただ、そこで働くうちに自分がとても接客が好きなことに気づいたんです。だから、最初は仕事ができなくても、とにかく笑顔で、いつも元気でいることを心がけました。来社されるお客さまも、ニコニコと笑っているほうがいいだろうな、って思ったから」

【上】ALSOKで技術職に就いている社員/技術職の女性はまだ少数だが、顧客からの要望を受け、支社として今後増やすことも検討。【下】仕事の必需品/ノートPCと携帯電話。十字ドライバー、ニッパー、六角レンチの3点も必携アイテム。

そうした前向きな姿勢を上司は見ていたのだろう。常駐警備の契約期間が終わって支社に戻ったとき、「工事班の技術スタッフをやってみないか」と声をかけられた。

それまで、機器を触ったことは全くなかった。新しい仕事に不安を覚えなかったといえば嘘になる。しかし、それでも彼女は「現場で多くのお客さまと接する仕事」であることに、魅力を感じた。

「異動してしばらくは戸惑うことばかりでした。でも、いま思えば受け付けの仕事で接客に慣れていたから、技術を覚えることに集中できたんです。いきなり技術職を担当していたら、続かなかったかもしれません」

当時の自分を思い出すと、彼女は笑ってしまうと言う。例えば、点検で少し高いところにあるセンサーの電池交換をするとき、脚立に乗るのが怖くていつも腰が引けていたものだ、と。

「おい、姉ちゃん大丈夫か?」

新築住宅の建設現場で職人たちにからかわれながら、少しずつ仕事を覚えていったあの頃――。

そんななかで、工事班の仕事をじかに教えてくれたのは、当時、1人だけいた一回り年上の女性技術スタッフだった。