キャリアの積み上げができるルート自体がない
「そもそも女性を受け入れる態勢が不十分。女だからということでいろんな意味でのチャンスが限定されるのが一番の問題。女性管理職が少ないのも、トップになれるようなキャリアの積み上げが可能な状況が少ないということ。昇進機会も含めて男女関係なく評価され、個々の才能を発揮できる場を整備してもらいたい」
さらに日本では子どもを産み育てるのは女性の役割とされ、男性と同じ働き方で正社員であり続けるためには困難が伴う。出産、子育て等でキャリアを中断せざるをえず、育休後の完全復帰もなかなか難しいのが現状だ。
「日本の女性の、労働者としての質は非常に高い。それは社会に還元されることが望ましく、企業側は子育て中などいろんな状況の人もキャリアを形成していける複線的キャリアパスを設けるべきです。年齢にも関係なく、多様なルートを通ってきた人ができるだけ自分の能力を活用できる社会にすることが、女性の活躍にもつながるはずですから」
“女だから”は封印して自立への覚悟を
一方、女性側にも格差の原因は存在する。“女だから”という意識が甘えにつながったり、一生懸命働いても報われないと諦めてしまいがちになったりする点だ。女性たちにも仕事と向き合う自覚を高めてほしいと、白波瀬さんは話す。
「自分のキャリアを絶対にゼロにしない。どんな仕事も点ではなく線となるよう続けていくことが力となり、たとえ失敗しても決して無駄にはならないのです」
とはいえ自分一人で乗り越えるのは厳しいので、サポートしあう仲間をつくる。年齢や職業もさまざまな友だちを持ち、たえず社会へのアンテナを張って情報収集することも欠かせない。
「今の仕事では思うように評価されないことがたくさんあっても、そこを通り抜ければ次の景色が見えてくる。自分が持つ力を信じていれば誰かが応援してくれるし、認めてくれる人もいるので、決して悲観的にならずに進んでほしいですね」
女性は結婚、出産、子育てなどを機に働き方が変わり、さらに離婚、リストラ、介護などで予期せぬ貧困に陥るケースを知るほどに、“明日はわが身……”とひとごとではない不安にも駆りたてられる。
だが、こうした時代だからこそリスクに備え、自立への覚悟が問われる。むしろ、前向きに生きる力を磨くチャンスに転じたいものだ。