出産で6割が離職するが女性の中途採用枠は少ない
実際に正規・非正規雇用の違いによって、いかなる格差が生じるのか。ニッセイ基礎研究所・生活研究部の久我尚子さんは、年収推計のデータで示す。
「正規雇用者は年齢(勤続年数)とともに年収が増加しますが、非正規雇用者には大きな変化がないため、年齢とともに格差が拡大していきます。日本企業では、正規は勤続年数が長いほど昇進しやすく、管理職などにもなるため賃金が伸びやすくなり、非正規は大抵、賃金面などで待遇が劣るため、ますます両者の差が開いていくのです」
女性の場合は出産で6割が離職。再就職はパートなど非正規が多い。子育て中は正社員に戻りにくい状況もあり、久我さんはその理由をこう捉える。
「家事・育児の負担が女性に偏っているためフルタイムで働きにくく、保育所不足で子どもの預け先を確保するのも難しくなっています。日本企業では、正社員を新卒一括採用して育てる風潮が根強いため、正社員の中途採用が少ない。女性自身も身近なロールモデルがなく、育児と仕事を両立したキャリア形成を考えにくい面もあります」
政府は「女性の活躍促進」施策として、待機児童の解消、職場復帰・再就職の支援などを掲げるが、出産後の就業継続率は依然として低い。雇用者における非正規の割合も、20~40代の女性で4~5割を占める。
そこで生じる格差には雇う側の受け入れ体制にも問題があるのではと危惧するのは、東京大学文学部教授で社会階層論を専門とする白波瀬(しらはせ)佐和子さんだ。