■バブル、就職氷河期……格差はこうして広がった!
国民所得倍増計画により、日本全体が「中流」意識を持ったのは戦後のこと。しかし、高度経済成長が止まる1970年代には女性のパートタイマーが増加。90年代のバブル崩壊以降には格差が広がり、2010年代には就職氷河期を迎え、格差は固定しはじめる。

1960年:国民所得倍増計画
1970年:「一億総中流」という言葉が登場
1979年:第2次オイルショック
1986年:バブル景気が始まる/男女雇用機会均等法施行、労働者派遣法施行

※この2つの法律により、女性総合職とパートタイマーが同時に生まれることになった。
1989年:ベルリンの壁崩壊
1991年:バブル崩壊

※このころから男性の所得が減少。父親や夫の収入に頼ってきた女性に自活の必要性が出てくる。
1993年:就職氷河期(~2005年)
1996年:労働者派遣法の規制緩和始まる

※98年ごろから企業が一般職を派遣社員などの非正規雇用に切り替えはじめる。
1999年:ITバブル景気始まる
2000年:ITバブル崩壊
2008年:リーマンショック/就職氷河期(~2013年)

※このころに格差が固定化しはじめる。
2011年:東日本大震災

家族モデルが多様化し女女格差が拡大

90年代に突入した「失われた20年」という時代。女性の格差は男性の格差に比べ、「二重」になったと、山田さんは指摘する。高度成長期には「男は主に仕事、女は主に家事」という性別役割分業の家族モデルがあった。

しかし、それは男性の雇用が安定して収入が伸び続けることが前提であり、それが崩れたことで、共働き世帯やパート等で働く主婦も増えることとなった。

「女性がいくら収入の安定した男性を結婚相手に望もうと、期待に沿うような未婚男性の絶対数が不足している。女性の格差は結婚によっていっそう広がるわけです」

家族モデルも多様になり、夫婦ともに正社員の共働き世帯と、夫が正社員で妻が非正規雇用の世帯では消費パターンが大きく違っているという。まして夫も妻も低収入の非正規雇用の家庭、離婚や死別などでシングルマザーになった女性の家計はいっそう厳しい。

かつて未婚女性の多くは親元で暮らし、離婚後に実家へ戻る母子もいたが、近年は親にも頼れないケースが顕著だ。親が非正規雇用で低収入の家庭に育ち、自分も非正規、結婚相手も非正規という貧困の連鎖も出てきている。

「女性は自分の働き方による格差に加え、親や結婚相手の経済力による格差という、3つの格差と向き合わなければならなくなった。しかし、そうして貧困に悩む女性を守る社会保障は発達しなかったということです」