悩んでいるときに救われた2つの言葉
長男を保育園に預けてから出社し、夜は夫や両親と分担して病院に通うという生活が続いた。毎朝、長男は激しく泣き、園長から「追加料金をいただこうかしら」と冗談を言われるほどだった。仕事を早めに切り上げて病院に行かざるを得ないとき、彼女は「いっそ、このまま会社を辞めてしまおうか」と思い詰めることもあった。
「入院が1カ月ほど続いたときは、子どもとの時間をつくれないことに悩んで、『すぐにでも辞めたい』と感じることもありました。でも、いま辞めたら会社に迷惑をかけてしまうし……」
そんなふうに揺れ動いていた彼女を救ったのは、2つの言葉だった。一つは保育園の保母さんに言われたことだ。
「育児は密度。一緒にいる時間が短くても、そのなかで質のいい育児ができればいいの。だから、あまり悲観的にならず仕事も続けなさい」
もう一つは、同じように子育てをしながら仕事を続ける先輩の女性が、心配してかけてくれた言葉。
「いまがどれだけ大変だと感じても、子育てには時間が解決してくれることがたくさんある。いまを乗り切ることだけに全力を尽くしなさい」
それらがただの励ましではなく、本当にその通りだったことを小島さんは実感している。
若手社員のように成長していたい
次男が退院し、子育ての環境が安定し始めると、彼女は新しい仕事にやりがいを感じるようになっていった。
女性の設計者がほとんどいなかったため、工事現場の担当者から、「事務の女に設計ができるか!」と面と向かって言われたこともある。
だが、育児の合間に土木施工管理技士などの資格を取り、作業着で現場に出続けるうちに、周囲の視線は変わり始めた。
例えば――膝まで地下水につかり、泥だらけになって作業を手伝ったある日、作業後にさりげなく差し出された缶ジュースに、彼女は自分が現場に受け入れられたことを感じた。
北部導管ネットワークセンターの設計部門に主任として異動したのは、2015年4月のことだ。千葉導管に勤めた19年間で、彼女はすでに管轄地域の「顔」となっていた。「何か問題が起きても、小島さんに言えば大丈夫」と頼られている中で、「そろそろ別の職場でも自分の力を試してみたい」と思っていた矢先の異動だったという。
「ちょうど良いタイミングでした。同じ職場にいると『慣れ』が生じる。すると、若手社員が仕事を一つ一つ覚えていくようなあの成長の感覚が、また欲しくなるんですね」