プレイベートでは相手に速度を合わせる
プライベートの場で話す場合の速度も同じです。元気な、明るい話題にしたいときは早口、ちょっと真面目に、しんみりしたいときはゆっくり。一般的に、ポジティブなことは早く聞いてほしいから早口、ネガティブなことは言いづらいのでゆっくりになります。ただし、プライベートでは相手とのコミュニケーションを重視しなければなりません。相手の気持ちを読み取って速度を合わせることがコツ。
たとえば、ご主人やパートナーが「ねえ、ねえ、ねえ」と早口で話しかけてきたら、「何、何、何?」と早口で返してあげてほしいのです。早口で話しかけてきた相手にゆっくりとした返事を返すと、相手はテンションが下がります。「おまえと話しても楽しくないや」となってしまう危険性があるのです。相手に合わせることで、楽しい内容はより楽しく、ネガティブな内容でも「責められた」のではなく、「受け入れられた」と感じてもらえます。
実はこれは、アナウンサーがインタビューで行っていることでもあります。深刻な話はゆっくり、「何々賞を受賞しました」といった慶事は早口で言います。インタビューでは、話しかける場面の「ところで」や「実は」のような、切り替えのタイミングで速度を変えます。話す速度を加減することで、自分がその場を仕切ることができるのです。
会話においては、自分が場を仕切るというキーを持っていてください。そのためのポイントが話す速度を意識することです。それが、やりたいことをあきらめないという「私プレゼン」の姿勢につながっていきます。
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。現在、国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。全国から研修・講演依頼があとをたたない。著書に、ベストセラー『その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)など。http://www.authenty.co.jp/
構成=坂口さゆり イラスト=米山夏子