オフィシャルな場面では「ゆっくり」話す

オフィシャルな場面では、基本的にはゆっくり話します。目安は「1分300文字」。これはNHKのアナウンサーがニュースを読む速さです。といっても、わかりにくいですよね。できればNHKの放送を聞いてください。お勧めはNHKラジオ。聞き流しながら1分300文字のテンポを身体で覚えてほしいのです。

ニュースをラジオで聞くのもテレビで見るのも無理な方は、とにかく「ゆっくり」を意識してください。できれば一度、ボイスレコーダーなどに自分の話を録音してみましょう。それを文字に起こしてみるのです。1分あたりどれくらいの速度で話しているかをチェックしてください。私がデータを採ったところ、一般的なビジネスパーソンは1分450文字ほどです。「1分300文字」という人は、政治家やセミナー講師など、人前で話すことに慣れている人くらいです。おそらく読者の皆さんも速い傾向があるはずです。

さらに、もうワンランク上のスキルもお伝えしましょう。ゆっくり話すべきオフィシャルな場面でも、プレゼンするときや自分の要求を通したいとき、熱意を示したいときなどは、速度に変化を付けます。ポイントは徐々に速くすること。たとえば、5分で自分の企画をプレゼンする場合、最初の2分は1分300文字のペースでゆっくり話す。後半3分は500文字くらいにどんどん速くしていくのです。最初の2分は結論や概論を話すため、論理的に冷静に、ロジカルなところをアピールする。そのためには早口であってはなりません。数字やデータを用い、冷静さ、信頼性を訴える。そして、次第に速くしていくのです。

論理的に説得したいときはゆっくりと、熱意や真剣さを印象づけたいときは速度を上げて話す(イラスト=米山夏子)

速度が増す話し方は、聞き手に熱意や真剣さを印象づけます。さらに、プレゼン内容に対する専門性を感じさせるという心理学のデータもあります。

ですから、もともと早口の人は、最初だけゆっくり話せばいいということになります。自分がどうしても通したい企画にいかに熱意を持っているか、いかに詳しいか、また、この人になら任せられるということを表すためにも、徐々に速く話すテクニックにも挑戦してみてください。