会社の一部をまっとうするより、全体を見渡したかった
新卒で入った会社は松下電器産業(現、パナソニック)。3年半、会社員生活を送った。
「最初はテレビ事業部というところに配属されました。大手企業ですが、部の単体として見ると中小企業的なところもあり、プレスリリースなど文章を書く機会をもらえたことはありがたかったですね。創業者の松下幸之助がつくった独特の文化は、僕のビジネスへの考え方の一部をつくったと思います」
同社の独特の文化のなかには、たとえば「水道哲学」と呼ばれるものがある。「蛇口をひねると水が出てくるように家電製品を普及させることによって人の暮らしを豊かにしよう」という意味だ。
「パナソニックの思想は、テクノロジーを普及させて、人の暮らしを豊かにしようという思いですね。その仕事によって人のライフスタイルを変えていきたいという思いは、僕にもありました。ただ、大企業の会社員というのは、大きな仕事の一部分を担うんですね。僕は全体が見渡せるような仕事をしたいと思ったんです」
インターネットに興味があった中村さんが、当時やりたかった仕事は「マルチメディア」。マルチメディア関連の部署への異動希望を出してみたが受け入れられず、留学も考えた。
「アメリカの大学院へ行けないかと考えました。会社に行きながら英語の勉強を独学でやりましたが、大學院に留学するには難しかった。でもTOEICの点数は伸びていたので、英語で働くことはできるかも、と思ったんです」
そこへ、願ってもない転職の話がやってきた。外資系の広告代理店が日本法人を立ち上げたばかりで、そこに参加しないかというのだ。