宗教の本【中級】
-宗教を少し離れて客観的につかむ
『教養としての宗教入門 基礎から学べる信仰と文化』中村圭志(中公新書)
宗教になじみの薄い日本人に向けて、宗教とは何かということを紹介した入門書。前半は宗教学の観点から述べ、後半はキリスト教や仏教など8つの宗教を解説している。信仰を持たない立場で書かれた客観的な一冊。
『イスラーム文化 その根柢にあるもの』井筒俊彦(岩波文庫)
イスラム学の世界的権威である著者が、イスラム教について説いたもの。経済人に向けた講演を基にしているため、神様と人間の関係を商売の契約にたとえるなど、わかりやすい話題から入っているのが特徴。
『仁義なきキリスト教史』架神恭介(筑摩書房)
キリスト教の発生から発展の歴史をやくざの抗争史にたとえた野心的な一冊。神様を大親分とし、若頭のイエスが既成のユダヤ教と争ったり、宗教改革が行われたり、読み物として楽しみつつ、キリスト教の歴史もわかる。
宗教の本【上級】
-宗教の神髄を究めたいなら
『邪宗門 上下』高橋和巳(河出文庫)
戦前にあって弾圧された大本教という宗教をモデルにした60年代の長編小説。戦争に向かう中、教主は投獄され、教団は壊滅していく……。学生運動がはなやかなころに、若い学生の読者を獲得した伝説的な小説。
『世界宗教史 全8巻』ミルチア・エリアーデ(ちくま学芸文庫)
著者は20世紀を代表する宗教学者。古代の宗教的営みから、仏教やキリスト教といった個々の宗教の解説まで、宗教のすべてがわかる全集。シリーズ8巻のうち、著者の死により、7巻、8巻は弟子がまとめている。
『虚無の信仰 西欧はなぜ仏教を怖れたか』ロジェ=ポル・ドロワ(トランスビュー)
植民地時代、ヨーロッパ人がインドで滅びた仏教を発見してから、仏教を“虚無の信仰”と恐れ、やがて正確にとらえるまでの過程を描いた作品。ニーチェやヘーゲルなど著名な思想家たちが出てくるのも興味深い。