哲学の本【中級】
-“私の心”と結ばれる3冊
『哲学のヒント』藤田正勝(岩波新書)
哲学することの意味を説く入門書。日常で哲学をするヒントがふんだんに盛り込まれている。日本の哲学には日本の哲学の「個性」があると論じている箇所は、哲学は西洋のものだけじゃないという自信が持てる。
『パンセ』パスカル(中公文庫)
か弱さにもめげずに、理性をもって果敢に考える人間の本質を描いたパスカルの道徳的エッセイ。人間の思考が単に理屈だけでなく、感情によっても構成されていると主張する繊細の精神と幾何学の精神の箇所に注目。
『道徳感情論 上下』アダム・スミス(岩波文庫)
自分の心の中の「公平な観察者」に基づく「同感」が、社会秩序を形成すると主張する道徳哲学の古典。同感によって他者の感情を自分の心の中に写し取り、想像力を使って同様の感情を引き出そうとする人間の本質を描く。
哲学の本【上級】
-「善い生き方とは?」を考える
『公共哲学 政治における道徳を考える』マイケル・サンデル(ちくま学芸文庫)
宝くじの道徳性から幹細胞研究の倫理まで、サンデル教授が物事の道徳性を本質にさかのぼって論じきる隠れた名著。地元が育てたスポーツチームが、お金によって他地域に誘致される問題を取り扱った章は必読。
『風土 人間学的考察』和辻哲郎(岩波文庫)
世界をモンスーン的風土、砂漠的風土、牧場的風土の3つに類型化し、気候などの風土から思想や倫理が影響を受けると主張。日本の分類の仕方、またその分類に基づく日本人の特質について論じた箇所は必ず読みたい。
『ニコマコス倫理学 上下』アリストテレス(岩波文庫)
善く生きるための倫理とは、共同体において育まれる徳であると説き、その本質は物事の適切な状態を意味する中庸であることを明らかにしたアリストテレスの代表作。生き方の教科書といってもいいほどの一冊。
作家・宗教学者・東京女子大学非常勤講師。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授などを歴任。
哲学者・山口大学国際総合科学部准教授。京都大学法学部卒業。名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。『7日間で突然頭がよくなる本』(PHP研究所)など著書多数。
構成=池田純子 撮影=市来朋久