国際情勢の本【中級】
-アメリカの理解を深めつつ世界の民族問題を分析

【左から】『外交 上下』ヘンリー・A・キッシンジャー(日本経済新聞出版社)/『宗教からよむ「アメリカ」』森 孝一(講談社選書メチエ)/『移民の運命 同化か隔離か』エマニュエル・トッド(藤原書店)

『外交 上下』ヘンリー・A・キッシンジャー(日本経済新聞出版社)
国際情勢を理解することは、アメリカを理解することと同等ですから、本書は中級の入り口に最適。著者は1970年代のアメリカで外交担当大統領補佐官、国務長官を務めた人物。外交の基本的な考え方が書かれています。

『宗教からよむ「アメリカ」』森 孝一(講談社選書メチエ)
多様な民族で社会を形成するアメリカは一種の民族共同体ですが、彼らの行動様式の基底のひとつにある宗教はキリスト教とイコールではありません。彼らは一神教であるユダヤ教やイスラム教を意識しているからです。

『移民の運命 同化か隔離か』エマニュエル・トッド(藤原書店)
著者はフランスの人口学者。「民主主義は家族制度に左右され、長男だけが相続できる国は不平等の国である」と言い、フランスとイギリスの移民政策とその課題を指摘。世界の民族問題を理解する一助となる本です。

国際情勢の本【上級】
-世界の法と条約を知り、外交の基本スキルを習得

【左から】『新版 国際法』山本草二(有斐閣)/『国際条約集 2015年版』奥脇直也ほか(有斐閣)/『戦争論 上下』カール・フォン・クラウゼヴィッツ(中公文庫)

『新版 国際法』山本草二(有斐閣)
上級者なら、国際法や国際条約の背景を理解し、国家がいかに生き残りを図っているかを理解すべき。本書は国際法の教科書で、キャリア、ノンキャリアを問わず、内容をすべて理解することが外交官になる必要条件です。

『国際条約集 2015年版』奥脇直也ほか(有斐閣)
世界のルールブックですから、辞書のように手元に置き、国際関連で疑問に思ったことを調べましょう。たとえば「集団的自衛権」の由来に疑問を持ったら、「国連憲章」を見れば戦争違法化から出てきたものとわかります。

『戦争論 上下』カール・フォン・クラウゼヴィッツ(中公文庫)
国際情勢を語るうえで避けられない「戦争」。国際社会では軍事力が圧倒的にものをいいますが、アメリカでさえ小国のイラクやアフガニスタンを思い通りにできない。こうした基本の理解が、国際情勢を読むのに役立ちます。

木暮太一
経済ジャーナリスト。慶應大学在学中に自作した経済学解説本は、いまも国内外の大学等で指定教科書に。伝える力を育てる「説明力養成講座」を東京・大阪・福岡・名古屋で開催。
 
佐藤 優
作家、元外務省主任分析官。『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『交渉術』『外務省に告ぐ』『国家の「罪と罰」』など著書多数。

構成=岩辺みどり、木下真之 撮影=永井 浩、田中真光