男性たちの衝撃は相当大きかった?
さて、このニュースが走った時、社会“倫理”や当事者たちの感情などとはまったく別のところで、世間には無責任かつ興味深い動揺が広がった。これは乙武さんがまさにずっと身を呈して主張してきたことの具現化だと私は思ったのだ。
不謹慎と分かっていてあえて言うけれど、「乙武さんでもそんなにモテるのに……」という、男性の間の衝撃は甚大だったようだ。性的に満足しているということがどれだけオトコたちにとって大きな関心であり、お互いの勝ち負けを決める要素であるかというのが痛いほど感じられた。
そして、「障がい者にも『性』があるのだ」と“発見”した人々の動揺と拒絶反応といったらなかった。変な言い方だけれど、これほど本当の意味で社会に「多様性とは何か」「強者・弱者という区分けは一体何か、誰のことか」を突きつけたエポックメイキングな出来事は、他にないのではなかろうか。
「障がい者は聖人ではない」がこれまでの彼の主張の一部だったのだから、「才能も、障がいも、結構なエロも、どうしようもなく人間的に弱い部分も、全部ひっくるめて“乙武洋匡という人間”」ということにしてしまえばいいのではないかと私は思っている。でも、選挙への出馬が絡むとそうもいかなかったということ、なのだろうか……。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。