“きっちりさん”なあなたの余力を、他者とシェアする

【河崎環さんの回答】

そんなあなたが羨ましいです。私は自分のフラフラした欲望ですぐなんでもポチっとネット購入してしまう典型的なキリギリス人間で、たぶん情勢の変化や天変地異やアポカリプスが起きたら真っ先に滅ぶ種です。でも、そんな私がどうにか滅ばずに生きているのは、私からすると「どうしてそんなに堅実なんだ!」と腹が立つくらい真面目な配偶者が、横でちょいちょい苦言を呈しながらバランスを取ってくれているおかげなのではないかと、普段は思いませんがいまちょっと思いました。

老後が不安で稼ぎをほぼ貯金しているとのことですが、あなたの「老後」プランには誰か一緒に年をとる人が入り込むスペースはあるでしょうか? きっとあなたは真面目で、とてもしっかりした自分軸をお持ちなのです。そういう人は一人でも生きていける一方、誰かと生きて行くことに(羽目に)なると、思いがけず舞い込むあれこれの出来事をもうまくこなしていける、余力を持つひとでもあるのです。

結婚や出産といった大きなライフイベントでなくとも、恋愛や、あるいは深い友情関係、もしくは遠い国の教育機会のない子どものフォスターファミリーになるなど、自分の人生が自分だけのものでなくなる経験をすることで、あなたのきっちりと破綻のない人生に、ちょっとした「ほころび」というか糸口をつくると、あなたの中で何かが動きだすでしょう。

あなたのきっちりした人生の余白を、ほかの人と共有してみてはいかがでしょうか。すると「何のために生きているのか」が見えてくるかもしれません。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。

文=本田健、河崎環 イラスト=伊野孝行