アイデアを出すためには、“体で判断する”
【原田】谷口さんは、空手を極めるためにアメリカ留学されたそうですね。
【谷口】大学で空手部の主将だったんです。大会で負けたのが悔しくて、大学を卒業してから1年間、アメリカで空手修行をしました。テキサス州の大会で優勝したので、もういいかな、と。それで帰国した後、IT業界に入りました。
空手は今でも続けているんですが、コンテンツのアイデアを出したりするのに似たところがあると思いますね。空手では、攻撃されてからいちいち対応を考えていては間に合いません。ネットでのアイデアも同じで、判断は速いほど正しいんです。ネットのユーザーはみんな、ぱっと見てすぐ「面白そう」「面白くなさそう」「役に立ちそう」「役に立たなそう」と判断する。そういう感覚を忘れないようにしています。アイデアは、時間を掛けるほど、ユーザーの感覚からズレてしまう気がします。
【原田】空手と似ているって、興味深いですね。「反射的に判断することは良くない」という人もいますが、実際ビジネスの世界では、瞬間的に精度の高い反応をしなくちゃいけないことの方が多い。
【谷口】「これをこうすると、次にこうなる」と考え出すと、アイデアは出てこなくなります。頭ってそんなに“頭がよくない”んですよ。体の方がずっと“頭がいい”。「歩く」こと1つとっても、「次はこの筋肉をこう動かして」なんて考えていると歩けません。目標を定めて、そこから逆算して行動しようとすると、煮詰まって一歩も動けなくなります。
【原田】確かに、脳がコントロールできる範囲には限界があります。
【谷口】私もまだまだ修行中ですが、武道の鍛錬は、いかに脳で考えるのを諦めるかだ、と教わっています。そこも、空手とコンテンツの企画と、似ているかもしれません。