テクノロジーの進化により、今までになかった「新しい仕事」が生まれています。この連載では、リクルートライフスタイルのアナリストであり、データサイエンティストとして活躍する原田博植さんを聞き手に迎え、新しい仕事の領域を切り開くフロントランナーにインタビューを行います。
「『嫌な社員はイヌ』と考えれば上手くいく」「プレゼント・ハラスメントには気をつけろ!」「『デートの歴史』のろしからポケベルに黒電話、デートの連絡手段の進化を見る」……、こうした“思わず笑ってしまい、人とシェアしたくなる”広告をネットで仕掛けているのが、LINE株式会社の広告ビジネス開発部でチーフプロデューサーを務める谷口マサトさんです。今回は、谷口さんに自分の好きなことと得意なことを組み合わせた「新しい仕事」に挑戦する理由と、さえたアイデアを生み出すための仕事術について聞きました。
“好きなこと”と“得意なこと”を掛け合わせて勝負する
【リクルートライフスタイル 原田博植さん(以下、原田)】谷口さんって、「何の仕事をしてるのですか?」ってよく聞かれませんか?
【LINE 谷口マサトさん(以下、谷口)】よく聞かれます。「すごーく簡単に説明してくれ」と言われたら、「テレビ番組で言うところの、バラエティ番組を作っている人」と答えています。
【原田】テレビで言うところの番組に当たるのが、インターネットでは記事や動画などのコンテンツ(作品)ということですね。谷口さんの場合はそこに「広告」の要素が入ります。
【谷口】そうですね。コンテンツの専門家も、広告の専門家も、それぞれすごいプロがたくさんいます。だから私は、“コンテンツと広告のかけ算”をやっています。そこは取り組んでいる人があまりいませんから。
【原田】谷口さんはもともと、個人としても人気コンテンツを企画されていますよね。
【谷口】私は昔から、『バカ日本地図』などのネットコンテンツを個人で作っていました。好きなんですよね。一方の広告は、関わる人が多くて複雑な調整が必要な世界ですが、私はもともと請負でWeb制作をしていたので、こうした調整が得意なんです。だから、好きなことである“コンテンツ”と、得意なことである“広告”を掛け合わせて、仕事にしているんです。
2011年くらいから、コンテンツと広告を掛け合わせた「面白広告をやろう」って言っていたんです。ネットの利用者が増えると、コンテンツの重要性が高まるだろうと考えていましたから。でも当時は「何を言ってるんだ」と言われました。今では面白広告が普通になりましたが、今でも「何の意味があるんだ」と言われます。でも、まだコンテンツの時代が始まっていないので、仕方ないですね。時間がかかるというのも分かっていますから。
【原田】「まだ始まってない」というのは、どういうことでしょうか?
【谷口】ネットの影響力って、テレビに比べるとまだまだ小さい。逆転するくらいでないと、コンテンツの力を生かしきれない。世の中の空気を変えられるほどの影響力は、まだネットの広告にはありません。これからが勝負ですね。