●がんばりすぎないで

ウイメンズクリニック南青山 小杉好紀院長

『卵子はよみがえる』など不妊治療に関する著書を多数発表している、ウイメンズクリニック南青山院長の小杉好紀先生は、見尾先生と同じことを、印象的な言葉で語ってくれました。

「もうそろそろ、あなたを許してあげてもいいのではないですか。不妊に悩む人は、一生懸命がんばりすぎるきらいがあります。

逆に、40代でも自然妊娠するタイプは、あっけらかんとしていて、マイペース。がんばりすぎれば、体全体のバランスが崩れてしまいます。不妊というのは、そのひとつの表れであり、それ以外にも体のいたるところで問題が起きているのです。がんばりすぎの人は、自分に対して条件付きの愛しか持てなくなっています。周囲の期待に応えるべく、高い目標を持ち、それができたときだけ、自分をほめる。達成しなければ、悩み悔やむ。不妊もまさにそうでしょう。そんな、条件付きの愛はやめ、代償を求めない愛で、自分を受け入れる。最新治療はもちろん重要ですが、その前に、あなた自身を許してあげることが重要です」

冒頭に書いたように、スワジランドでは今でも40代女性が平均0.90人の子どもを産みます。リベリアやサモアでもその数字は0.50人に迫る。大正時代の日本も同様に0.43人を産んでいた。それは、現代の日本よりも、無理せず自然に生きていける社会だったからこそ、可能なのかもしれません。

田中温(たなか・あつし)
セントマザー産婦人科医院院長。1976年順天堂大学医学部卒業。85年、国内で初めてGIFT法による妊娠・出産に成功した、高度生殖医療の第一人者。卵細胞質置換(卵子の若返り法)の臨床への応用を目指して研究中。
福田愛作
IVF大阪クリニック院長。1989年京都大学医学博士取得。米国東テネシー州立大学体外受精ラボディレクターを務める。日本人として初めて米国バイオアナリスト協会(ABB)IVF培養室長資格(HCLD)を取得。
見尾保幸
ミオ・ファティリティ・クリニック院長。1974年鳥取大学医学部卒業。97年、クラインフェルター症候群患者に対するICSIによる妊娠、出産に日本で初めて成功。現在、JISARTの理事長を務める。
小杉好紀
ウイメンズクリニック南青山院長。1995年東京医科大学大学院修了。生命科学と医学の橋渡しをするトランスレーショナルリサーチを専門とする。都内のクリニックを拠点に、心と体すべてを対象とした統合医療を実践。

イラスト=Takayo Akiyama