空き巣の被害にあった雪美さんのケース

昨年の秋に空き巣に入られた会社員の雪美さん。空き巣は窓ガラスを割って家に入りました。盗まれたのは、隠してあったヘソクリ30万円のほか、新しいノートパソコン(時価10万円)、ゴールドのアクセサリー数点(時価20万円)で、計60万円。窓ガラスの修理費用2万円は火災保険から支払われましたが、盗まれたものに対する補償はありませんでした。

このケースでは、上記(1)の差引損失額は次のようになります。

●差引損失額=損害金額(60万円)+災害等に関連したやむをえない支出金額(2万円)-保険金などによる補てん額(2万円)=60万円

雪美さんの昨年の年収は500万円で、所得金額は346万円、所得税率は10%でした。そこで、(2)の雑損控除額は次のようになります。

(A)差引損失額(60万円)-所得金額(346万円)×10%=25万4000円
(B)災害関連支出はなし

このケースの雑損控除額は、(A)の25万4000円です。

所得税率10%の雪美さんが雑損控除の申告をすると、戻ってくる所得税は25万4000円×10%=2万5400円。このほか、今年6月から支払う住民税(税率は一律10%)も2万5400円安くなるので、所得税・住民税合わせて5万800円の税金が安くなります。

「被害に較べれば少ないなあ」と感じるかもしれませんが、ダメージを受けたときには嬉しいお金だと思います。申告する際には警察の盗難証明書や関連した支出の領収書などが必要となり、少し面倒ですが、こんなときこそぜひ申告したいところです。

なお、被害がもっと大きくて、雑損控除の額が所得金額を超えるようなときは、3年間にわたり、繰り越して控除を受けることができます。また、家財の価格の2分の1以上の損害があったときは、雑損控除に代わって「災害減免法」という救済措置も選択できる場合もあります。大きな被害があったときは、税務署で相談するのがおすすめです。

雑損控除を申告するようなことは、そう起きるわけではありません。でも、自分だけでなく、家族や友人に何かあったときのためにも、こうした救済措置があることを覚えておくといいですね。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。