不動産購入リスク軽減策(2)「どこを貸すか」
民泊、軒先ビジネスなど新サービス続々
もう一つは購入後、我が家を貸すことで収益を生むという手である。例えば、最近話題の「airbnb(エアビーアンドビー)」に代表される民泊。我が家を、空いている一部屋からでも貸すことができ、都心近くであれば1人1泊数千円から1万円程度にはなる。目黒区で友人と2人で3LDKマンションに住むIさんによると、1カ月のうち、2週間程度宿泊者がいれば16万円ほどの家賃は賄え、それ以上利用されれば収益になるとのこと。都心近く、駅近くの物件であれば、借りてもらいやすく、宿泊料金も高く設定できるそうである。
しかも、これまでグレーな存在とされてきた民泊を一定の条件を付しながらも認める条例が2015年10月に大阪府、同12月に大田区で可決されており、豊島区も検討に入るなど容認の動きが広がっている。元々戦略特区内では可とされてきた民泊だが、詳細は条例で定めることとしていたことが、グレーのままになっていた要因のようだ。
先例となる条例が登場したことで、続く自治体が出るはずで、近いうちには首都圏の多くの自治体で可能になるのではなかろうか。また、11月には特区方式とは別に国土交通省と厚生労働省が有識者会議を立ち上げ、全国を対象にしたルールづくりを始めてもいる。
ただし、マンションの場合には資産価値が落ちる、防犯上問題があるなどとして管理規約で民泊を不可としようという動きもあり、条例その他で民泊が可能になったとしても、そこで阻まれる可能性がある。
一戸建ての場合にも大田区では近隣住民への事前の周知が必要としており、いくら我が家とはいえ、好き勝手にやって良いというものではない。自分が住みにくくならないよう、マナーのある貸し方をするべきだろう。
一戸建ての場合には庭や軒先、空いている部屋などを短期貸しするという手もある。そんな場所が貸せるのかと思う人もいるが、これが意外に使われている。人通りがある軒先なら弁当や野菜などの販売に、空いている1室なら教室やセミナーにと活用方法は多岐に渡る。こちらも民泊同様、立地が決め手で、都心に近い、駅に近い、人通りが多いなどといった場所がよく利用されており、中には週日はほぼ利用されているような場所も。
軒先ビジネス、スペースマーケットといった、スペースシェアを促進するサイトを見ると、借りてもらいやすい条件が分かるはずだ。それほど大きな収益は見込めないにしても、こうした工夫でローンを多少でも補えれば、住宅購入後のリスクもさほど大きくならずに済むのではなかろうか。
https://www.airbnb.jp/
■もったいないスペースをシェアする「軒先」
http://www.nokisaki.com/
■ユニークなレンタルスペースを簡単に貸し借り「スペースマーケット」
https://spacemarket.com/
東京情報堂代表、住まいと街の解説者、日本地理学会会員、日本地形学連合会員。
住まいの雑誌編集に長年従事。2011年の震災以降は、取材されることが多くなった地盤、街選びに関してセミナーを行なっている。著書に『キレイになる部屋、ブスになる部屋。ずっと美人でいたい女のためのおウチ選び』『住まいのプロが鳴らす30の警鐘「こんな家」に住んではいけない』『住まいのプロが教える家を買いたい人の本』など。2015年11月には『解決!空き家問題』(ちくま新書刊)が発売されたばかり。