社内ポジションが確立されるから、許容範囲が狭まる

かつて「窓際族」と呼ばれた年配の男性従業員は、このご時世かなり減りました。が、それでも大手企業を中心にまだまだ健在。パソコンを立ち上げたと思ったら、ソーシャルメディアなどで遊んでいて、時間が来たら優雅にランチ、しかも報酬も高いとなると、忙しく働いているみなさんにとって許せない存在であることは、異論を挟む余地はありません。あるいはこんな人はいませんか。やる気ばかり主張して、実際に能力が伴っていないのに社内体制を愚痴る若手社員。

大事な会議になると、なぜか体調を崩してしまって欠席ばかりする主任に憤りを感じることも当然ですし、自分のメンツばかり主張して、周囲がいくら慎重に根回しを進めていても、商談をぶち壊すことを厭わない別部署の管理職……「こうした存在は目の端に入るだけで不愉快だ!」と思う人に、「そう思ったらダメでしょう」とはなかなか言えません。

こうした「自分にとって社内で許せない存在」は枚挙にいとまがないくらいいるわけですが、これらの多くはもともといた、わけではありません。年を重ね、仕事ができるようになり、組織でのポジションが確立されてきたからこそ、結果として「許せない」存在として、浮かび上がってきているのです。

許せない人が増えると、ストレスが増え、疲れも増える

仕事ができるようになったら、許せない人が増えた……なんとも皮肉なことですが、言われてみればなるほどそうかもしれないと思う人も多いはずです。

自分自身の能力が高まると、見えなかったことが見えるようになる。その結果、許容範囲が狭くなってしまうことは、ある意味、成長の証であると考えられます。しかし別の視点で見れば、「能力の上昇とともに、自らの心も今まで以上に寛大になる」わけではない、ということでもあります。当然といえば当然ですが、相手に理不尽さがあることに対して、人はそれほど寛容にはなれないのです。そうなると、仕事をしていてもイライラが募ってしまって、ストレスも増えてくる。

職場での地位がもっと上がって、イライラの対象者を指導したり、あるいは左遷などの方法で目の前から「飛ばしたり」できる状態になれば、話は別です。が、そうでもなければ、日々の疲れは増すばかり。現状と上手に折り合いをつけるしかありません。けれども、一朝一夕に心を広くしろと言われても、それは無理な相談です。どうすればいいのか、その方法のツボは「原因を突き止める」ことにあります。どうしてあの人が許せないのか、その原因を整理し、言葉にしてみることです。例えば、コラム冒頭で挙げた窓際族は「仕事しないで遊んでばかりいる」から許せないという感じでしょうか。