毎日会社でボンヤリ暇そうでロクに働かない年配の男性社員、意識高めだが仕事ができない、口を開けば愚痴ばかりの若手……。あなたの職場には、見ているだけでイラッとするような“許せない人”はいませんか。

すべての従業員が生き生きと働いている。そんな企業は理想的です。実際、メディアなどで紹介される企業の多くは、若手、シニア、男女の差なく「私たちの思いを形にすることによって、結果的に会社に貢献し、自分自身の自己実現も果たすことができている」という、それこそ人によっては夢のように見える話にあふれています。

結論からいうと、そういう企業があるのは事実ですが、当然、すべての企業がそうであるはずはありません。あまりにも理想的なシーンを見せられ続けると勘違いしそうになりますが、考えてみてください。そういう企業は普通ではないから、メディアに登場するのです。ニュースバリューがなければ取り上げません。

今回は、自分はそんなキラキラした環境にいない、という人のための話を少しだけ。

毎日何をしに来ているのか分からない社員にイラッ

理想に満ちあふれていた若手社会人時代とは違って、キャリアの曲がり角にさしかかろうとしているみなさんは、それこそ、酸いも甘いも噛み分けているはずです。気合いを入れすぎて空回りしていた新入社員時代を懐かしみつつ、今はそこそこに頑張ることで、最大のパフォーマンスと評価を得る術を身につけた、という人も少なくないでしょう。しかしふと気がついて、周囲を見渡してみると「この人の働き方は許せない」という人がいるのではないでしょうか。例えば「毎日何をしに来ているのか、分からない年上の男性」はその代表格。ちょっとは働けよ、と。

社内ポジションが確立されるから、許容範囲が狭まる

かつて「窓際族」と呼ばれた年配の男性従業員は、このご時世かなり減りました。が、それでも大手企業を中心にまだまだ健在。パソコンを立ち上げたと思ったら、ソーシャルメディアなどで遊んでいて、時間が来たら優雅にランチ、しかも報酬も高いとなると、忙しく働いているみなさんにとって許せない存在であることは、異論を挟む余地はありません。あるいはこんな人はいませんか。やる気ばかり主張して、実際に能力が伴っていないのに社内体制を愚痴る若手社員。

大事な会議になると、なぜか体調を崩してしまって欠席ばかりする主任に憤りを感じることも当然ですし、自分のメンツばかり主張して、周囲がいくら慎重に根回しを進めていても、商談をぶち壊すことを厭わない別部署の管理職……「こうした存在は目の端に入るだけで不愉快だ!」と思う人に、「そう思ったらダメでしょう」とはなかなか言えません。

こうした「自分にとって社内で許せない存在」は枚挙にいとまがないくらいいるわけですが、これらの多くはもともといた、わけではありません。年を重ね、仕事ができるようになり、組織でのポジションが確立されてきたからこそ、結果として「許せない」存在として、浮かび上がってきているのです。

許せない人が増えると、ストレスが増え、疲れも増える

仕事ができるようになったら、許せない人が増えた……なんとも皮肉なことですが、言われてみればなるほどそうかもしれないと思う人も多いはずです。

自分自身の能力が高まると、見えなかったことが見えるようになる。その結果、許容範囲が狭くなってしまうことは、ある意味、成長の証であると考えられます。しかし別の視点で見れば、「能力の上昇とともに、自らの心も今まで以上に寛大になる」わけではない、ということでもあります。当然といえば当然ですが、相手に理不尽さがあることに対して、人はそれほど寛容にはなれないのです。そうなると、仕事をしていてもイライラが募ってしまって、ストレスも増えてくる。

職場での地位がもっと上がって、イライラの対象者を指導したり、あるいは左遷などの方法で目の前から「飛ばしたり」できる状態になれば、話は別です。が、そうでもなければ、日々の疲れは増すばかり。現状と上手に折り合いをつけるしかありません。けれども、一朝一夕に心を広くしろと言われても、それは無理な相談です。どうすればいいのか、その方法のツボは「原因を突き止める」ことにあります。どうしてあの人が許せないのか、その原因を整理し、言葉にしてみることです。例えば、コラム冒頭で挙げた窓際族は「仕事しないで遊んでばかりいる」から許せないという感じでしょうか。

原因を突き止めると、嫌な人もスルーできる、かもしれない

さて、ここでもう一歩踏み込んで考えてみましょうか。仕事もしないで遊んでいる年上の同僚が許せないのはなぜなのでしょう? 組織に貢献していないからとか、自分だって働きたくないのにずるいとか、いろいろと理由はあると思います。それを掘り下げてみてください。そうすると、そこには「自分と属している組織との関係性」が、不思議と浮かび上がってくるのです。例えば、給料泥棒なんて許せないという正義感のよりどころが、組織に属して、共に働いて、企業の繁栄を当事者意識高く願っている、そのことに結びついたりするのです。嫌な人のことをイヤイヤ考えて、その基準を整理することで得られる副産物です。

その基準を並べると「自分には、意外と大事じゃなかった」ということで許せるようになるケースも出てくるはず。許せない理由を曖昧にしておくことで、少なくともスルーしてもいい人にまでイライラしていたという、無駄を見つけることができるのです。まずは、その「必要のない」許せない人を除くこと。その上で「今の自分の立場では、そのイライラは解消できないこと」をペンディングしてしまうと、周囲の“許せない人”は劇的に減るでしょう。

それでも減らない! という人は、今の場所に留まらないという選択肢も視野に入れる必要がありそうです。そこは、あなたには相応しくない場所という証明なのですから。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。