現在、世界中の大学に起業家育成講座があるが、中でも高い評価を受けているのがスタンフォード大学で起業を教える、ティナ・シーリグ教授の講座だ。同大学からは、グーグルやヤフー、インテル、ネットフリックスのCEOや創業者など、著名な産業界のリーダーが次々と輩出している。シーリグ教授に起業の秘訣を伺うため、初夏のスタンフォード大学のキャンパスに向かった。
起業を成功に導く技術を教える
教授は今学期、火曜の午前中は工学部にあるデザイン・スクール(d・スクール)で教えている。d・スクールとはコンピュータ・サイエンス、教育学部、医学部、ビジネススクール、法学部などさまざまな専門分野の学生たちが革新的な事業案を設計する場。明るい日差しが入る2階のスタジオでは、各グループに分かれた学生たちがトランプで家を組み立て、ルールにのっとりポイントを多く稼ぐ課題に取り組んでいた。ポイント集計後、学生たちとシーリグ教授が輪になって結果を分析し始める。そこから導き出された目的達成のための戦略や心構え、チームワークやコミュニケーションの取り方などに関して討議し、さらに教授も加わりディスカッションを重ねる。まさに頭脳と体が全開で動く熱い講義だ。
シーリグ教授はd・スクールだけでなく、スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム(STVP)でも、自由な発想や革新的な解決策、起業家精神とは何かなど、起業の技術を教えている。彼女はSTVPを率いるエグゼクティブ・ディレクターでもある。「STVPには35コースあり、起業戦略、金融、市場開発、組織行動、リーダーシップ、交渉法、想像力など、いろいろな側面から事業に関して教えています」。年に約3000人以上の学生たちがプログラムに参加し、そのうち約15人が博士課程だ。
「STVPは、これまでフィンランド、マレーシア、チリ、ウルグアイなど世界の大学と提携してきました。日本の大学とも提携したいですね」と、大阪大学で教えたこともある教授は語った。