――表面化した経営権をめぐるあれこれをニュースで拝見しながら、久美子社長はなぜここまで頑張れるのだろうか、と思っていました。1700人を超える従業員を抱える上場企業のトップは大変な仕事です。銀行やコンサルティングの仕事もなさった経験がある久美子社長なら、矢面に立たずに済む他の人生の選択肢もあったのではないですか。
誰かに代わってもらえるなら、代わってほしいと思いましたよ。ですが、その時点で会社が生き残るために必要な改革を実行できる立場の人が他にはいなかったのです。
経営者にとって会社は自分の子どものようなものと、よく例えられますよね。前会長である父は創業者ですから、とりわけそうだろうと思います。しかし、私にとってもそうなのです。子供がいない私にとって、全力で守るべきものは、やはり会社でした。このままでは傾くかもしれない我が子を見過ごすわけにはいきません。もちろん、暮らしの中心にある家具という商品にも特別の思いがあります。
だからでしょうか、「今、私がやらなければ一生寝覚めが悪い思いをするだろう」と思ったんですね。全力を尽くしてダメだったら諦めもつくかもしれませんが、まずは全力を尽くさなければ、という気持ちでした。
「大塚家具=高級家具」といったイメージを持たれがちな弊社ですが、実は中価格帯が主力商品です。今後はそうした実像をもっとご理解いただき、より多くのお客様に選ばれる店になるべく、さまざまなチャレンジをしていきます。
※【後編】は12/16(水)配信予定です。
株式会社大塚家具 代表取締役社長。1968年、埼玉県生まれ。一橋大学経済学部卒。富士銀行(現みずほフィナンシャルグループ)勤務を経て、1994年大塚家具入社。1996年取締役を経て、2009年社長に就任。2014年7月社長解任。2015年1月社長に復帰。
撮影=岡村隆広