『旅ガール 地球3周分のときめき』

ある映画監督の言葉が耳に残っている。「映画はつくったら終わりじゃない。その映画を誰かが観て、完結する。だから100人が観たら、100人それぞれの中でその映画が生き、100本の映画が完成する」と。そしてこう続けた。「どうぞ、自由に感じて、自由に自分の映画を完成させてください」

私はその言葉を「自由に感じる素敵さ」だと解釈した。本も同様だ。自己啓発書や実用書、辞書などを除き、小説、芸術書それぞれが、自由に感じ、考え、想像する余地があるものだ。

書店で偶然見つけた“鮮やかで、キラキラ光る写真集”『旅ガール、地球3周分のときめき』も、その自由な感性を放っていた。

『旅ガール 地球3周分のときめき』(田島知華“たじはる”著/廣済堂出版刊)

“たじはる”ことトラベルフォトライター・田島知華さんのファースト写真集&エッセイ。「遠い国の海の波音を聞いてみたい」「想像もできない絶景を見てみたい」そんな感情に動かされ、夢中で世界を旅した彼女が撮った写真は、“リオデジャネイロの階段”“ブリュッセルの広場”“マラケシュの履物”“イスタンブールのランプ”“ブエノスアイレスの書店““アゲダの傘”……などなど。ちなみに“アゲダの傘”は、本の表紙になっている美し過ぎる風景だ。

もし、この写真集を誰かにプレゼントしたら……きっと会話が生まれるだろう。「どの写真が好きか?」「どこの国に(街に)行きたいか?」「まだ見ぬ風景をどう感じるか?」と。最近落ち込みがちな友達に贈れば、鮮やかな色彩とカラリとした空気感に、癒やされるかもしれない。あるいは自分で手に取って、ランチタイムにゆっくり眺めれば、1人想像の世界へ飛べるのではないだろうか。「ここではないどこか」を想い、“自分の可能性”ってやつを考えるかもしれない。フレッシュな感性に刺激されて、自分の仕事の目的を改めて考える機会になるかもしれない。

まだまだ若い“たじはる”は、これからもたくさんの旅を続けるだろう。いや、もしかしたら、急に旅をしなくなるかもしれない。それは彼女にも、誰にも分からない。今回偶然この本を見つけたように、彼女からの手紙(写真集)に再度、出会いたい気がする。