STEP2:生地は扱いやすいものを。ランクの上げ過ぎに注意!

早速生地選びに入ります。「スーツは“春・夏”“秋・冬”と、2シーズン着られるものが一般的です。最近はクールビズの影響を受け、“春・秋・冬”の3シーズンに対応できる生地も増えており、特に女性のお客様に人気です。またウール100%でなくポリエステル混紡でも、柔らかくてしわがつきにくい、優秀なものが出ています」(堀越さん)ということで、スーツ上下に縫製込みで48000円(税抜)という、ウール60%、ポリエステル40%の3シーズンに対応できる生地を選びます。手入れがラクなため、出張が多い人にも人気とのこと。

色は、淡い色だとカジュアルな印象になるため、基準スーツの場合は、濃いグレーか紺がお勧めです。グレーは、より親しみやすい印象に、紺は硬めの印象になります。T部員は、「かっちりしてシャープな印象にしたい」との希望で、紺にすることにしました。

生地を10センチ角くらいにカットして貼り込んだサンプルブックを見ながら選んで行きます。ポイントは“サンプルだけ”で決めないようにすること。小さなサンプルでは素敵に見えても、面積が大きくなると派手な印象になったりするからです。また、顔写りや肌触りも重要。実際に使用する生地がある場合は広げてもらい、体に当ててみましょう。「サンプルブックで見るのと、大きな生地を当ててみるのとでは、印象が全然違う! 肌触りのよさも分かりますね」とT部員。生地が小さなサンプルしかない場合には、スーツに仕立てた際、どんな印象になるかをお店の人に相談してみるとよいアドバイスが得られます。

「バンチ見本」と呼ばれる生地のサンプルブックと、実際の反物を見比べながら進めていく。

紺色で無地だと、着こなしによっては事務員の制服やリクルートスーツのように見えてしまいます。「多少柄が入っている方が、インナーとも合わせやすいです」(堀越さん)ということで、紺地に細いストライプの入ったものに決めました。

が、「せっかくなので、ちょっと高級なものも見せていただけますか?」と、シルク混の生地も出してもらいました。「うーん、せっかく作るのだから、やっぱり生地のランクを上げたほうがいいのかな……」と心が揺れ始めたT部員。「初めてのオーダースーツは基準スーツととらえて、背伸びしない方がいいと思います。1着作ってみて気に入れば、生地のランクを上げて、より好みにあった2着目を作られるといいと思いますよ」と、すかさず堀越さんから優しいツッコミが。「いけない! 落ち着け自分……」ちょっと舞い上がってしまった心を落ち着けて、次の「デザインを決める」ステップに進みます。