後輩や部下を連れて取引先へ、現場責任者として謝罪に……。管理職やリーダーになると、きちんとした装いが求められる場面も多くなります。こうした“いざ”というときに着られる仕事服を持っていますか? 「高そう」「敷居が高い」イメージがある「オーダースーツ」ですが、実は最強の仕事服をリーズナブルに手に入れる近道なのです。このスーツオーダーに、編集部のT部員が自腹で挑戦しました。
仕事人として無敵の1着を手に入れる!
ビジネスシーンにおいて、男性は多くの場合、ネクタイとスーツが標準。しかし、女性の仕事服は選択肢が広く、ここぞというときに何を着たらいいのか分からないという声が、編集部にもよく寄せられます。そんな声を受けて立ち上がったのが、プレジデントウーマンオンライン編集部のT部員です。
(1)いざというときに着て行ける、(2)男性管理職の中でも悪目立ちしない、(3)体に合っていて着心地がいい、この3拍子がそろうスーツを、“リーズナブルに” 手に入れたい。予算は「既製服と大きく変わらない金額」ということで、5万円程度に設定。
この願いをかなえるべく、東京都千代田区にある生地商社直営のオーダースーツの専門店、OGGI HOUSE(オッジハウス)を訪れました。オーダーには、主に個人ごとの型紙を作って手縫いする「フルオーダー」と、既存の型紙を基にカスタマイズを行って工場で機械縫製する「セミオーダー」の2種類があります。OGGI HOUSEはセミオーダーのお店で、紳士物だけではなく婦人物も手ごろな価格で購入できます。
加えてうれしいのが、女性店長の堀越雅美さんが対応を行っていること。女性の仕事服の“お作法”にも詳しく、分からないことにもアドバイスがもらえます。
STEP1:オーダー開始、初めの1着はベーシックなものを
それではオーダーのスタートです。最初に、おおまかな要望を伝えます。今回は、「きちんとした装いが求められるときにも通常の業務にも着られて、手入れが楽なスーツを、リーズナブルに」と伝えました。堀越さんは、「ではオーソドックスでベーシックなものがいいですね。初めてのオーダースーツにはぴったりです。まずはTさんの“基準スーツ”を作りましょう。この1着目を基準にして、2着目以降は『もっとこんな感じのものを』と、好みに合わせて調整していけます」と話してくれました。
基準スーツのお勧めは、タイトスカートとジャケットの組み合わせです。特にタイトスカートは、サイズや丈が合っていればスタイルもよく見える上、クールで落ち着いた印象になります。しかしこの“サイズや丈が合っていれば”がくせ者。T部員は、「私、お尻が大きいのがコンプレックスなのです。タイトスカートはサイズが合うものをなかなか見つけられません。ヒップに合わせて選ぶと、ウエストがガバガバ。苦手意識があって、今までほとんどはいたことがありません」
でも、だからこそのオーダーです。「大丈夫ですよ。採寸して、体に合ったものを作れるのがオーダーのよさ。Tさんはタイトスカートもきっと似合うと思います」と、堀越さん。
さらに、「あわせてシャツも作るといいですよ」とのアドバイスが。「ジャケットのインナーに何を合わせるかが決まっていると、コーディネートに迷わなくていいので楽ですし、何より、体に合ったシャツは心地いいですよ」。それを聞いたT部員、きちんとしたシーンでも使えるコンサバなものと、普段の打ち合わせなどでジャケットなしでも着られる少しデザインのあるものの2枚を作ることに決めました。
STEP2:生地は扱いやすいものを。ランクの上げ過ぎに注意!
早速生地選びに入ります。「スーツは“春・夏”“秋・冬”と、2シーズン着られるものが一般的です。最近はクールビズの影響を受け、“春・秋・冬”の3シーズンに対応できる生地も増えており、特に女性のお客様に人気です。またウール100%でなくポリエステル混紡でも、柔らかくてしわがつきにくい、優秀なものが出ています」(堀越さん)ということで、スーツ上下に縫製込みで48000円(税抜)という、ウール60%、ポリエステル40%の3シーズンに対応できる生地を選びます。手入れがラクなため、出張が多い人にも人気とのこと。
色は、淡い色だとカジュアルな印象になるため、基準スーツの場合は、濃いグレーか紺がお勧めです。グレーは、より親しみやすい印象に、紺は硬めの印象になります。T部員は、「かっちりしてシャープな印象にしたい」との希望で、紺にすることにしました。
生地を10センチ角くらいにカットして貼り込んだサンプルブックを見ながら選んで行きます。ポイントは“サンプルだけ”で決めないようにすること。小さなサンプルでは素敵に見えても、面積が大きくなると派手な印象になったりするからです。また、顔写りや肌触りも重要。実際に使用する生地がある場合は広げてもらい、体に当ててみましょう。「サンプルブックで見るのと、大きな生地を当ててみるのとでは、印象が全然違う! 肌触りのよさも分かりますね」とT部員。生地が小さなサンプルしかない場合には、スーツに仕立てた際、どんな印象になるかをお店の人に相談してみるとよいアドバイスが得られます。
紺色で無地だと、着こなしによっては事務員の制服やリクルートスーツのように見えてしまいます。「多少柄が入っている方が、インナーとも合わせやすいです」(堀越さん)ということで、紺地に細いストライプの入ったものに決めました。
が、「せっかくなので、ちょっと高級なものも見せていただけますか?」と、シルク混の生地も出してもらいました。「うーん、せっかく作るのだから、やっぱり生地のランクを上げたほうがいいのかな……」と心が揺れ始めたT部員。「初めてのオーダースーツは基準スーツととらえて、背伸びしない方がいいと思います。1着作ってみて気に入れば、生地のランクを上げて、より好みにあった2着目を作られるといいと思いますよ」と、すかさず堀越さんから優しいツッコミが。「いけない! 落ち着け自分……」ちょっと舞い上がってしまった心を落ち着けて、次の「デザインを決める」ステップに進みます。
STEP3:ジャケットのオプションは付けすぎない
一言に「タイトスカートとジャケットの組み合わせの、オーソドックスなスーツ」と言っても、デザインはさまざま。まずはジャケットから細かいデザインを決めていきます。ボタンの数は全体の印象を左右するもので、2つボタンか3つボタンが一般的。「最近は既製服で1つボタンが流行しているため、1つボタンか2ボタンかで迷われるお客様が多いです」(堀越さん)というお話も参考に、1着目の基準スーツなので、ベーシックな2つボタンを選択。襟の形は、オーソドックスなノッチドラペルに。
最近は企業を訪問する際に入館証の携帯を求められることも多いので、胸ポケットを付けておくと便利です。男性のスーツに多く見られる内ポケットは、女性の場合、ものを入れるとバストラインが崩れてしまいます。また内ポケットからものを出し入れする動作はあまり美しくないので、なくても大丈夫とのこと。
腰ポケットも、あくまでもデザイン上のもので、使わないことが基本です。ポケット口のデザインは、斜めか水平かを選べますが、今回は水平のものを選びました。このほか、背中のスリット(センターベントを選択)、袖口のボタンの数(3つ)など、どれも基準スーツらしく、オーソドックスなものを選択しました。
裏地を選べるのもオーダーならでは。「盛り上がりますねー」と、また鼻息が荒くなるT部員に、堀越さんは「基準スーツは、背伸び禁物ですよ」。基本は「表の生地と同色系を選ぶ」と覚えておけば安心です。表生地やその柄の色に合わせると、すっきりまとまります。
ボタンも同じく、基本は生地と同色系がお勧めです。ボタンが目立ち過ぎると、アクセサリーをつけるときに邪魔になるので要注意です。
そして、オーダーといえばネームです。「ジャケットを脱いだときにちらっと見えるのがかっこいいですよね」(T部員)。名字ではなく下の名前をアルファベットの筆記体で入れることにしました。やっとジャケットのデザインが決定。ほっと一息です。
※【後編】(http://woman.president.jp/articles/-/790)では、スカート、シャツのデザイン決定、採寸、試着について紹介します。
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