枠から解き放つのが、メンターの役割

1997年の設立以降、岩附さんは約10人のスタッフと数々の活動を抱え、日夜、自分よりもACEをどうするかを常に考えて走ってきた。その岩附さんにとって、久能さんの言葉は大きな発想の転換になった。

「ACEの代表としてどうしていくか、ということばかり考えていたので、私個人が何をしたいのか、なんて考えたことがなかったのです。ましてやACEがなかったら、なんて発想もありませんでした。『今までのことは置いておいて、どうしたらいいと思う?』って聞かれて、改めて自分がすべきことを考えることができました」

メンターの久能さんは、「私の役目は、彼女をアンリーシュ(unleash)することです」と自身を位置付け、こう語る。

「アンリーシュとは、英語で解き放つといったような意味があります。犬を首輪から外すように。私はアメリカに住んで20年以上たちますが、日本は教育レベルが非常に高いのに、仕事での女性のジェンダーギャップは非常に大きいことを改めて感じています。

才能、スキルの高い女性が、次のレベルに飛躍する時、メンターという役割はパワフルなツールとなります。しかしマッチングが難しい。今回は私がその手助けができるなら、とメンターとしてのオファーを受けました。さまざまな枠から解き放って飛躍のきっかけを提供すること、それが私の役目だと思っています」

久能さんの言葉で初心に帰ることができたという岩附さん。同時に、自分が凝り固まった考えの中にはまってしまっていたことにも気付いた。

「心地よいと思える空間の境界を出ないと、世界は変えられないと気付かされました。改めて考えたら、私はもっと多くの児童労働を解放し、たくさんの人を助けられる仕組みを作りたかったんだと思ったのです。より大きなものを動かしていくためには、政治的な意志の必要性も感じました。私が集中して目指していくべき方向性が見えました」

まっすぐ前を見据える強いまなざしに、彼女の迷いはもう消えていることが見て取れた。