もしも書類を出すのが遅れたら……?

ここまでお話した通り、源泉徴収は概算による所得税額であるため、年末に正しい所得税額を算出して精算するのが「年末調整」です。控除などを含めた正しい税額よりも先に収めた源泉徴収額が多かった場合は、税金が戻ってきます。逆に源泉徴収額が少なかった場合は、さらに税金を納めることになります。

この年末調整に関する書類を提出するのが遅れてしまった場合は、源泉徴収票が配布される翌年1月末日まで、やり直しができます。ただし、源泉所得税の過不足金の再計算だけではなく、法定調書の合計表や給与支払報告書の作成、報告……といった事務処理もやり直すことになり、経理担当者からは歓迎されないでしょう。

さらに遅れてしまった場合は、自分で確定申告するしかありません。確定申告の期限は3月15日です。面倒に感じられる年末調整も、確定申告をすることと比べれば、はるかに手間がかからないのです。年末に向けて仕事が忙しくなる時期ですが、会社ごとに決められた提出日に遅れないように、年末調整に関する書類を作りましょう。

井戸美枝(いど・みえ)

社会保険労務士、CFP。
神戸生まれ。関西大学社会学部卒業。社会保険労務士、CFP、社会保障審議会企業年金部会委員。経済エッセイストとしても活動。関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエント・フライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、ライフプランや資産運用などについて分かりやすくアドバイスしている。