「熱くなれ!」という声に惑わされない
【河崎環さんの回答】
そうなのです、ワクワクすることを探すのも簡単ではありませんが、そもそもワクワクというのがいったい自分のどういう状況を示すのか、経験がないとまったく想像がつかないのがオノマトペ(擬音語・擬態語)の難しいところです。私は頻繁にワクワクしがちな、落ち着きに欠ける人間なもので、すぐに血圧がゴオーッと上昇し、「うおお」とか「すげー」と声が出たり、対象にぐっと近づいてよく見たり聞いたり(なんなら嗅いだり味わったり)したくなってしまいます。ホント、こういう人間って暑苦しいし、全般的に「迂闊(うかつ)」なので、人生の失敗に事欠きません。
ですから、ワクワクなんて安易にしないほうがよほど冷静沈着な、ヘタを打たない人生を送れるのではないかと質問者の方をうらやましく思うほどです。感情の起伏が緩やかで、物事をゆったりと観察して、自分なりの感想を持つ。ちょっと興味を引かれたら、試しに自分もやってみる。向いてないなと思ったら、そっとやめる。気に入ったら、もういいやと思うところまで継続してみる。それで十分ですよね。そういう瞬間があったら、きっとそれがあなたの「穏やかなワクワク」です。どうも声が大きい人たちって、すぐ他人に「熱くなれ!」とか「生きがいを見つけろ!」とか、大げさに号令をかけたがりますが、あれはたき付けてないと自分が死んじゃう厄介な人種ですから、言わせておけばいいんです。もとが冷静な人々は、ゆるやかに穏やかに生きましょう。
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。
文=本田健、河崎環 イラスト=伊野孝行