インフレなのにゼロ金利のままなら?
銀行預金がこれからもゼロ金利だったら、という仮定をあえて置いたことには意味があります。それはアベノミクスという政策はゆるやかなインフレを進める一方で、金利を意図的に抑え込む仕組みがビルトインされているからです。
私たち生活者が日常で接する金利は、預金などに適用される短期金利です。日本の短期金利は、預金金利がずっとほぼゼロであるのと同様、デフレ経済に陥って以降やはりゼロ近辺に定着しています。これは経済活動が低迷している限り、仕方がないこととされています。
ところが将来のインフレ率を反映する金利とされる長期金利も、今の日本では限りなくゼロに向かって低下しています。長期金利というのは、私たちが住宅ローンなどを固定金利で組もうとする場合に適用される金利のことで、その基準は10年国債の利回りを見るのが一般的です。
皆さんは日本の10年国債の利回りを知っていますか? 日頃あまり目にすることはないでしょうが、2015年11月現在では0.3%程度です。これはアベノミクス政策において、日銀が日本の国債をかたっぱしから買いまくっているため、意図的に下がり続けているのです。つまりこの政策が続く限り、日本は長期金利も上がらない! ということは、アベノミクスがうまくいって2%のインフレ率を達成したとしても、金利はおそらくゼロ近辺のままであると想定しておく必要があります。
健全な自由主義経済においては、インフレの進行でお金の価値が下がった分は、金利が上がり、価値下落相当分をカバーしてくれるものです。ところがアベノミクス下の日本経済では、私たち生活者は短期金利から長期金利に至るまで、インフレ分のお金の価値の目減りが金利によって報われることはないと覚悟しておくべきなのです。