5. 今の世の中は女性に不利な環境。昇進する自信が持てない

女性が自信をなくす原因は、生まれつきや成育環境よりも、社会人となってからの世の中の仕組みと考える人が、年齢が高くなるにしたがって多くなるようだ。社会的な仕組みを変えるには、時間とたくさんの人の協力が必要である。現在の逆境や、女性に不利な環境のもとで、したたかに生き抜くメンタル的な対処方法は、「逆境を乗り切る意味」を発見することだ。

Q.女性が自分自身に自信が持てないとき、その原因はどこにあると思いますか?
年齢を重ねると、自信をなくす原因を「世の中の仕組み」だと考える女性の割合が高くなる。

スポーツの現場でも、信じられないくらいの逆境で戦い続けるアスリートから、「こんな苦しい経験にどんな意味があるのですか」と質問されたとき、私はこう返す。「逆境を耐える意味を見つける力こそ、メンタルの強さだ。しかし、答えは一人ひとり違う。意味はあなたが発見するものだ」

ナチスの強制収容所で生き延びた人は、意味を見つける能力が高いといわれている。意味こそ生きがいを創る。

まとめ:人間力で勝負する時代は女性が主役

最近は、企業でも人間力を持った人が求められている。本稿のアンケートで、「仕事をやり遂げる能力も含め、人間として総体的に自己評価したとき、女性と男性とでは、どちらのほうが、自信を持っていると思いますか」と聞いたところ、女性は人間力に対する自信は男性のほうが高いと思っているが、男性は反対に、女性のほうが高いと思っているという結果が出たのだ。

“人間力で勝負する時代”といわれている今日、自分たちの人間力に自信を持てないと女性が思い込んでいるのは、とても残念なことである。男性は、女性の人間力にはかなわないと考えているにもかかわらず、である。

今回執筆するにあたり、5人のすばらしい成果を挙げているビジネス・ウーマンにインタビューをお願いし、質的データを収集した。同時にスノーボール方式(調査をする側の主観を少なくするために、人づてに調査を依頼して、雪だるまを作るようにデータを集める調査方法)によって、66人のビジネスパーソンに、アンケートに答えてもらった。サンプル数が少ないが、質的データや先行研究とつき合わせて、できる限り、正確な分析を心掛けた。

ゾム株式会社 代表取締役 松下信武
1944年、大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業。日本電産サンキョー・スケート部メンタルコーチ。専門は情動心理学。