英国の田舎町で起きた「譲らない」事件

そんな「譲る女」だらけの日本ではまず起こらないであろう、女性が「権利」を主張することによる紛争が、例えば英国では起こる。英国バークシャーのメイデンヘッドという、典型的な古き佳き英国の面影を残す小さな田舎町で、2台のメルセデス・ベンツが細いトンネルの中でお互いに道を譲らず40分睨み合い、大規模な交通渋滞を引き起こしたとの話が、大衆紙デイリー・メールのウェブサイトで報じられた(記事:http://www.dailymail.co.uk/news/article-3246424/Outrageous-video-shows-road-shut-FORTY-MINUTES-two-Mercedes-drivers-stand-single-lane-railway-bridge-refuse-budge.html)。

英国の大衆紙デイリー・メールで報じられた、ベンツ2台の「譲らない事件」。Facebookのシェア数8600、コメント数3400というとんでもない盛り上がりぶり
記事ページで見られる動画には、40分のにらみ合いと、怒号が飛び交うようす(ピー音だらけだ)が臨場感たっぷりに記録されている

この町はテムズ川の上流にあたり、テムズに架かる古い大小いくつもの橋や、橋へ向かうトンネルがある。しかしそれらは古き佳き町並みを保全するのが最上の美徳という英国的態度によって拡張されず、車がすれ違うだけの道幅がないので車線と歩道は一つだけのまま、という場所が多い。信号がないこともしばしばで、そういう場合、車は橋やトンネルに差し掛かると、対向車の様子を見ながら一車線を片側ずつ交互に通行することになる。

対向車が既に橋の上やトンネルの中にいるときは、自分の側が停車し、橋のたもとやトンネルの入り口で待たねばならない。もし自分が進入したあとに対向車が既にいたことに気付いたら、より出口から近い方が入り口までバックする。ルールは存在するものの、あくまでも細部の実践はマナーや良心に委ねられており、橋やトンネルで対向車と出会ってしまったが距離的にはどっちもどっちだったりすると、最終的には例えば相手が女性なら男性側が紳士らしく道を譲り、あるいは余裕のある側が「自分は教養やマナーをちゃんと身につけた質の高い人間である」証明として道を譲る。対向車同士がお互いに譲らないなどという事態は、英国的には非常識極まりない出来事であり、まして40分も睨み合って渋滞を引き起こしたなど、「嘆かわしい」の極みなのだ。