■中央大学特任准教授高橋亮平さんから

提言:待っていても何もしてくれない。もっと声を上げて!

日本は高齢者の政治参加が若者のそれと比較して優位で、「シルバーデモクラシー」だといわれます。高齢者の声を聞くことは決して悪いことではないのですが、「高齢者の声を過度に反映する政治」は問題です。

たとえば、年金をはじめとする社会保障。 個人が一生の間に国に支払う額と国から受け取る額を世代別に推計すると、現在の60代は一生で約5000万円得するのに対し、10代以下の人たちは5000万円ほど損することに。生まれた時代により、その恩恵に大差や損得があるのは大問題で、日本はこれが世界でもっとも顕著な国の1つといえます。

年金でいうと、不公平を生み出している要素の1つが、賦課方式という運営方式です。現役世代が今のお年寄りの年金を支払う仕組みであり、自分の年金を積み立てているわけではありません。少子化が進むと年金運営が厳しくなるのは明白です。

また、雇用でも高齢者優遇は存在します。変化の兆しはあるとはいえ、日本の企業は終身雇用・年功序列賃金体系がまだ中心であり、若いうちは働いているわりにそれに見合った給料が貰えない。さらに、従業員の雇用を守ろうとすると、総人件費をコントロールするためには、調整弁として新卒採用の人数で調整するのがてっとり早い。もしくは若者を非正規で採用する。結局、被害を受けるのは若者や女性になりがちです。

個人年金を準備することも大切ですが、不公平な状況について、もっと声を上げていい。待っていて何かやってくれる国ではないからです。投票に行くのはもとより、会社の飲み会や女子会でも、もっと気軽に政治の話をしてほしいですし、新しい声の出し方、政治への参画の仕方を模索してほしいと思います。

撮影=市来朋久