日本は高齢者天国で、現役世代の負担が大きすぎると憤るワーキング・ウーマンにお集まりいただきました。将来への備えをしっかり整えながらも、やはり不公平感は収まりません。
竹田さん/ウエディング業界で活躍後、現在はIT系企業にて社長秘書として勤務。今月には起業する予定。
石山さん/大手建設会社にて10年以上勤務。転職活動中。高齢者の再雇用について一家言あり。
※キャリア女性のための転職サイト「ビズリーチ・ウーマン」の協力を得て3人の方にご参加いただきました。
【竹田】私は社長秘書をしているのですが、その社長は75歳なんです。一代で上場企業をつくっただけに、資産は莫ばく大だい。でも、年金はしっかり貰っている(笑)。なおかつ、ものすごく病院に行くわけです。それで、飲み込めないんじゃないかというほど、薬を飲む。逆に私たちは、元気すぎる社長のペースに巻き込まれ、病院にも行けず、どんどん不健康になっていく……。
【松本】今75歳の方って、年金で一番得している世代ですよね。支払った原資より多く貰える。
【石山】本当に。私は、会社員だから仕方がなく年金を天引きされているけれど、自分がそれを受け取れるとは信じていません。
【竹田】私もです。もしフリーだったら絶対に払わない。だから、個人年金保険を始めたくらいで。
【松本】今後のお年寄りの増加と少子化、そして東京オリンピック後の日本経済の停滞を思うと、年金破綻は明白。今は無理やり日銀がお金を刷るなどしてインフレ誘導していますが、国の借金を考えると国債の利払いができない日が来るに違いありません。
【竹田】私も日本はそのうちギリシャのような国になると思います。
【石山】かつてのジンバブエやアルゼンチンみたいな超ハイパーインフレが来て、日本円は紙くずになるなんてことがあり得ると思う。
【松本】私は、年金だけではなく日本の医療も崩壊すると思う。税収に対する社会保障費の割合が上がりすぎて、国民皆保険や介護保険を維持しきれなくなる。私の田舎は四国なのですが、安倍さんがいくらお金を刷っても、それが届かない(笑)。若い人やお金は東京に集中するから。田舎は、医師や介護士なども人手不足だし、ニーズに比して施設も少なく、きょうだい全員東京にいる私は、将来どうやって親の医療や介護をサポートしたらいいのか、不安です。
【石山】同感です。私の会社は一応、介護休暇はあります。でも、法的に90日ほどしか保証されていない。そのせいで、「介護離職」した上司がいました。育休は2年も3年も取れる場合もあるのに、介護は90日っておかしいですよ。
【竹田】今後われわれは、年金や医療を支えるために70歳すぎても働くようになるんでしょうね。
【石山】高齢者再雇用時代はすでに始まっていますもんね。私のいる建設業界は、ある程度の物件は1級建築士の資格を持っていないと管理できないから、有資格者の高齢者が優遇されて、どんどん再雇用されるんです。ところが、図面を見て安全が担保されているか確認する仕事が全然できない。そして、全部私が直すハメになる。
【松本】えっ、なぜ間違えるの? やる気がないんですか?
【石山】やる気はあるし、悪気もない。ただ複雑な事務の仕事はできない。彼らに何を任せるかも今後の課題だと思います。
【松本】受け入れる現場は大変ということですね。安倍首相は、高齢者以上に女性活用も声高に叫ぶけど、それだって、現場の声との乖離(かいり)が激しい。
【竹田】安倍さんは女性、女性と言うけど、長時間労働など男性の働き方を変えないとワーク・ライフ・バランスが実現できるわけがありません。私は、会社員では育児と仕事の両立は無理だと考えて、独立しようと思っています。でも、日本では自営業者に対して政府系金融機関がお金を貸すとか、起業を促進する支援が頼りない。
【石山】そのくせ、規制をかけ、補助金を与えて、大手を守る。ウチの会社もたっぷり貰っていますが。
【松本】いまだに予算消化のための工事や政府系広告があるなんてことも信じられないですね。
【竹田】そういう規制を仕切っているオジサン、オバサンには一度どいていただいて(笑)、「若手中心の国会」をつくってもらいたい。制度を決めるのも、オジサン、オバサンばっかりでは、彼らにとって有利な政策しか実行されません。
【松本・石山】まったく同感です。
■中央大学特任准教授高橋亮平さんから
提言:待っていても何もしてくれない。もっと声を上げて!
日本は高齢者の政治参加が若者のそれと比較して優位で、「シルバーデモクラシー」だといわれます。高齢者の声を聞くことは決して悪いことではないのですが、「高齢者の声を過度に反映する政治」は問題です。
たとえば、年金をはじめとする社会保障。 個人が一生の間に国に支払う額と国から受け取る額を世代別に推計すると、現在の60代は一生で約5000万円得するのに対し、10代以下の人たちは5000万円ほど損することに。生まれた時代により、その恩恵に大差や損得があるのは大問題で、日本はこれが世界でもっとも顕著な国の1つといえます。
年金でいうと、不公平を生み出している要素の1つが、賦課方式という運営方式です。現役世代が今のお年寄りの年金を支払う仕組みであり、自分の年金を積み立てているわけではありません。少子化が進むと年金運営が厳しくなるのは明白です。
また、雇用でも高齢者優遇は存在します。変化の兆しはあるとはいえ、日本の企業は終身雇用・年功序列賃金体系がまだ中心であり、若いうちは働いているわりにそれに見合った給料が貰えない。さらに、従業員の雇用を守ろうとすると、総人件費をコントロールするためには、調整弁として新卒採用の人数で調整するのがてっとり早い。もしくは若者を非正規で採用する。結局、被害を受けるのは若者や女性になりがちです。
個人年金を準備することも大切ですが、不公平な状況について、もっと声を上げていい。待っていて何かやってくれる国ではないからです。投票に行くのはもとより、会社の飲み会や女子会でも、もっと気軽に政治の話をしてほしいですし、新しい声の出し方、政治への参画の仕方を模索してほしいと思います。