心理学者アルフレッド・アドラーが説いた【自信】【勇気】【リラックス】の3テーマを軸に、職場の人間関係を円滑にする「自分の表現法」を学ぶシリーズ。教授いただくのは自己表現研究の第一人者、パフォーマンス心理学博士の佐藤綾子さんです。レッスンはテーマごとに1レッスン、3つのレッスンが1クール。設問に沿ってセルフチェックした後、あなたの心理傾向を診断し、その対策をコーチしていきます。
■自信のレッスン
猛暑の夏が過ぎて、「もの思う秋」到来。日頃から自分のことを反省したり、人間関係の難しさを感じる人にとっては、暑さが和らいで思索にふけるに適した季節になったことで、ますます自分や他人の心の内側が気になり始める時節です。「食欲の秋だ」と、おいしいものに気持ちが飛んでいる人とは対照的に、「もの思う人」は自分の価値や印象(見え方)、評価が気になるものです。
それは人間としての誠実さの証、成長の原点でもあるので素晴らしいことなのですが、自分を厳しく見つめ過ぎると、不安感情の方が大きくなって、今週のテーマ【自信】がぐらつくこともあります。
【自信】は、新しい仕事や付き合いを始める場面で、私たちの心を支える大切なパワーです。“Self-confidence”自分を確信すること――このパワーの源があることで、上司から叱られても、失恋しても立ち直ることができます。さて、あなたの自信はどんな状態ですか?
Lesson7.自信 その3
ではセルフチェックをしてみましょう。回答は4パターン【A.いつもそうである】【B.ときどきそうである】【C.たまにそうである】 【D.全く違う】があります。セルフチェックの後は心理分析と合わせ、その対策もご紹介。自己分析して、明日からのあなたがさらに一歩前進するためにトライしてみてください。
回答にはそれぞれ点数があります。3回のレッスン(自信・勇気・リラックス各1回が1クール)の終了後に総評があるので、各レッスンの点数を控えておくと便利です。
Q.自分がどう思われているか不安だ
[A]いつも(1点)
[B]ときどき(2点)
[C]たまに(3点)
[D]全く違う(4点)
[A]の人の性格傾向と心理分析
不安症あるいは神経症的傾向の強いタイプです。または自意識過剰タイプの場合も。人からどう思われるか、という他者認知が常に気になる人です。実はこれには2タイプの人が含まれています。
2タイプとも自信がなさそうに見えるのが共通点ですが[第1群]は、実はプライドが高く、それ故に自分が望む通りに見えているかどうかが気になるグループ。[第2群]は、逆に全くプライドが持てず自信がないグループです。2群は神経症的傾向も強く、常に神経が過敏でわずかなストレスに対しても容易に動揺を示します。1群2群と、表面的には同じように見えますが、両者は全く違う心理構造なのです。
●対策
あなたが気にするほど、周囲はあなたを気にしていない場合がほとんどです。会議などで「○○さんは出席していたっけ?」と言われている程度でも、あなたの方は「寝不足で目の下の隈が目立って老けた印象だったに違いない、いやだなあ」と、気になっていたりします。
自分がどう思われているのか極端に気になる人の思考パターンは、モーズレイ性格検査などの心理テストをすると「内向性」が高いことが多いので、もっと他人のいいところを探したり、会議で聞いた中から面白いアイデアを考えたり、関心を外に向けていきましょう。心理学で「外向性」と呼ばれるタイプへの変換をするのです。楽しいことをたくさん作って、外へエネルギーを放出するよう努力しましょう。
[B]の人の性格傾向と心理分析
やや自信喪失型で不安型のタイプです。人間は生涯に渡り、個性の成長「個性化」と、社会とどう関わるかという「社会化」の2つの成長をしていきます。“自分らしくなっていくこと”と“みんなに合わせていくこと”と言い換えてもいいかもしれません。その2つの中で社会つまり周りの人々に気を遣い過ぎて、自分の伸びやかさが抑えられているのがあなたです。
●対策
自分が今日はパリッと鮮やかなスカイブルーのスーツで会社に行きたい、と思うあなた。しかもその色とデザインは自分に似合うことを知っています。でも、「素敵過ぎちゃうと先輩女性に気を悪くされるかもしれない」と考え直し、無難な服で出掛けたりしていますね。それが重なると次第に抑圧された欲求がマグマのようにたまって、欲求不満(フラストレーション)になり、顔つきが暗くなります。
自分に似合って、今日の気分にぴったりの服なのだから、誰が何を言っても構わない、という割り切りの気持ちを持ってください。これをアドラーは「課題の分離」と言いました。どう振る舞うかはあなたの課題。それをどう受け取るかは相手の課題。だから気にしても意味がない、という割り切りも大事なのです。ブルーのスーツ姿のあなたを大好きだと思う人もいる、嫌いだと思う人もいる、それでいいじゃないの、と割り切りましょう。