転職を思いとどまった出来事
今こうした仕事に私がやりがいを感じているのには、1つの大きなきっかけがありました。
それは2006年のこと。会社の財務状況が厳しかった時期に一度だけ本気で転職を考えたことがあったのです。
ところが、ある大手企業の選考で、部門の責任者から「今の会社でやり残したことが本当にないのならうちに来てほしい。今の会社であなたは活躍しているし、まだやり残したことがたくさんあるんじゃないか。一生のキャリアを考えたとき、本当に後悔しないかをもう一度考えて欲しい」と言われました。
それで一晩考えてこう思ったのです。入社後の10年間で、大京は金融支援を2度も受け、周囲にはいつ潰れるのかと言われて続けてきました。そんななか、同僚が次々と辞めていくのを間近で見るのはつらいことでした。
そんなことをふと思い出し、自分も同じようにこの会社を去っていいのか。そう改めて考えていると、これまでお世話になった人たちの顔が浮かび、失墜してしまった大京ブランドの信頼を回復させることが、本当は自分がやりたいことではないのかと気付いたのです。それで最後の最後に転職を思いとどまりました。
転職を断念したからには、もう後には引けないという気持ちになりました。これからはブランド価値を高めるために力を尽くしたい。思えば、私が「野心」を持つようになったのは、この決意がきっかけだったという気がします。「大京っていい会社だよね」とステークホルダーに言っていただくためには、会社を変えられる業務に携わり、経営に関わっていたいと思ったからです。
1997年慶應義塾大学卒業後、一般職として入社。2000年、総合職に職種転換。住宅企画部でマーケティング、事業企画等を経験し、08年産休。10年、グループ経営企画部。12年より、担当課長に。
構成=稲泉 連 撮影=村山嘉昭