貸借対照表の科目は、読まなくても実態がつかめる

会社の全体像を掴むうえでは、貸借対照表の個々の科目について見る必要はありません。左側は流動資産と固定資産から成るため、それぞれの総資産を占める割合を計算して、円グラフにします。右側についても同様です。負債と純資産の割合を計算し、円グラフにします。それだけで実態が見えてきます。

ここでA社を取り上げます。A社の2014年12月期における連結ベースの貸借対照表を円グラフにすると図のようになりました。

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貸借対照表の個々の科目について細かく見るのではなく、まずは円グラフから全体像を掴む。

2つのグラフから、A社はお金の9割以上を流動資産に使っており、そして純資産が全体の8割以上を占めていることから自己資本が相当多いことが読み取れます。

これにより、A社は設備投資がそれほど必要でない業種に属していて、借金がほとんどなく、かつ内部留保が多いことから高収益だということが推測できます。2つのグラフでこれだけの情報が得られるのです。

実は、このA社はパズドラというオンラインゲームを世に送り出したガンホー・オンライン・エンターテイメントです。インターネットを介したオンラインゲームを提供しているためコストは開発費以外にはさほどかからず、一発当たれば多くの利益が会社にもたらされます。会社が経常的な営業活動や財務活動を行ったときに手元に残る利益の売上高に対する比率を「経常利益率」、あらゆるコストや費用、税金を差し引いた後に残る当期純利益の売上高に対する比率を「当期純利益率」と言いますが、実際に、ガンホーの2014年12月期の経常利益率は54%、当期純利益率は35.8%とかなり高くなっています。また、流動資産のほとんどが現金及び預金です。利益率が高いことや借金がほとんどないことは、うまくいっているIT企業の1つの特徴です。